わたくし、コヤナギユウというヤクザな風来坊でございます。
今日日はかげろうの島に候。「奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ」と題しまして、小説家の三谷晶子姐さんをたずねてまいりました。
なんだいなんだい騒がしいな海なんてこわかないよ。だいたいなんでわざわざ濡れようなんてコトを考えるかねぇ。
泳げない?……いや、そんなこたぁねぇよ、馬鹿言っちゃいけねぇよ。泳げるよ、泳げるさぁ、当たり前だってんだい。泳げるけれども、泳ぐ必要があるんですかいってんだ。ええ? なに? 海がきれいだって? 青いつったって入浴剤入れた湯船じゃあるめいし、限度があるんだろう。ああうるさい、そこまで言うんだ、なに覗くくらいは見てやるか。
おいこりゃ驚いたよ。
まるで浮いているみたいじゃないか……そりゃ海だから浮くか。
いや~、すごいねぇ、空に浮いてるみたいだよ。
(以上で寅さん口調終了)
今日はBLUE WATER ADVENTURE’Sのヨットに乗って海に出た。
オーナーのリュウさんが、たくさんのロープや、大きな帆を手繰り出稿準備をしている。
ヨットは大きな帆に風を受けて進む。
風の力だけで進むので、無風なんだ。
加計呂麻島と奄美大島の間の「内海」はとても静かで、白波は全く立っていなかった。
耳をすましても、ささやかな波と風の音だけ……
というわけにはいかない。
今日はやんちゃな友達が一緒なのだ。
リュウさんの息子のイケメンがおモテナシしてくれる。
東京はなにが流行ってるの?
なにを食べるの?
など意外な質問が飛んでくる。
そういえば、なにが流行ってるんだろうね。
東京にいたって、そんなこと考えたことなかった。
都会ほどたくさんの人が居ないので、わたしの受け口も珍しかったらしい。
「なんでアゴが出てるの?」
わたしが聞きたいっつーの。
いちばん驚いたのは
「口の中見せて!」
面食らいつつ、素直に見せるとそのリアクションは予想だにしなかった。
「わー! 銀歯だ! カッコイイ!!」
価値観さえもトコロ変われば、である。
小さなレディも一緒だった。
船の先端にあるネットに足を投げ出して、帆の影で太陽から逃れ。
何度も何度も深呼吸をする。
この空気も、写真に写れば良いのにな、と思う。
スポットにつくと錨を下ろし、船を固定させた。
すると子ども達が我先にと飛び込んだ。
船長のリュウさんも。
わたしもライフジャケットを借りて海に入る。
海があんまりきれいだから、空を飛んでいるみたいだった。
リュウさんの舟の中には、スタンドアップパドル、というサーフィンボードの上に立って遊ぶものもあった。
わたしも、これに挑戦してみた。
……いける!
わたし、これ、転ける気がしない。
どこまでも行けそうだ。
疲れたらヨットがある。
ヨットの上ですぐに休める。
クラーボックスには冷たい水。
海から上がってしょっぱくなった口には、甘いフルーツジュールが美味しい。
ふと、ヨットの下を覗き込むと、驚くほど青い世界が広がっていた。
なんというか、海が光ってる!
ヨットの影に太陽の光を受けた海水が光っているようだ。
みんながつぎつぎ覗き込み、飛び込んだ。
海でいつも遊んでいて、海と仲良しの、みんなが。
わたしは少し、海がこわい。
ライフジャケットを着て海に入るのは、まだこわい。
だけど、船の下なら、つかまるところも、たくさんあるし。
思いきって、飛び込んだ。
大丈夫! 大丈夫! とみんなが手を引いてくれた。
ヨットの突起を避けたり、もぐったり。
探検をしてるようで楽しかった。
海は輝いて美しかった。
全然こわくなかった。
みんないるし。
海に潜ってみた。
水はとっても澄んでいて、よく見えた。
ヨットの影。
浮いてるみたいだ。
浮いてるんだけど。
そう、飛んでるみたいだ。
そう思ったら、ふと、いける。と思った。
ライフジャケットなくても、いける。
カラダひとつで海に入っている感覚が気持ちいい。
シュノーケルとフィンを掴んで海戻った。
泳げた!
わたしがいちばんびっくりだ。
まさか泳げると思わなかった。
実はこういう人は多いんだそうだ。
海がきれいで先が見えるから、緊張がほぐれて、泳げるようになるんだって。
まさに私がそれだった。
大空から大地を眺めてるような感覚だ。
ヨットというホームがある安心感も大きい。
下から見たところ。
たくさん泳いでみた。
ヨットから離れて、サンゴの多いところに行ってみた。
手を伸ばせばサンゴに届きそう。
わたしにはもう、浮き輪も、ライフジャケットもない。
海とわたしとの隔たりは、もうない。
手を伸ばす。
肩を伸ばす。
精一杯近づくことが、できる。
イソギンチャクのつぶつぶは、近くで見ると、もっとブツブツ、ふわふわしていた。
毛足がなくて、リラックスしてる様子のイソギンチャクもいた。
これは、イソギンチャクかしら、サンゴかしら。。
気がつくとずいぶん遠くまで泳いでいた。
つかまるところなんてない。
立てるような場所じゃない。
でも大丈夫。
焦らないでヨットに戻ることができた。
途中、人魚のチエちゃんを思い出した。
わたしも、潜ってみたいなと思って、また、出来るって思って、潜ってみた。
ゴウフォフォフォ!!!
出来なかった。
海水が入った鼻が痛い。
耳抜きも上手に出来なかった。
今日、はじめて泳げるようになったくらいだもんね。
急にそんなに、仲良くなれないよね。
素潜りは、次の約束にしよう。
また来るって言う、約束にしよう。
太陽が傾き、日が暮れる前に帰ることにした。
ヨットといてってもいろいろだ。
リュウさんの友達のヨットとすれ違った。
同じ風を受けてるのに、とっても、速い。
写真に上手く写っていないけれど、何かの稚魚の群れに出会った。
水中の天敵を除けてか、稚魚たちは一斉に海面にシャンプする。
キラキラと銀色の虹がかかる。
何度も、何度も、あちこちで、幾重も。
夕日がいまにも吸い込まれそうだ。
今日が終わる。
青かった海が、こっくりと深く、黒く表情を変える。
ねっとりと、まるで粘度まで変ってしまったように。
明日帰るチエちゃんが声を上げた。
「あたし、最後に飛び込みたい!」
わたしも、オレもと、みんな声をあげ飛び込む。
その度に、真っ黒な海からキラキラと金色の水しぶきが上がった。
気がつけば、船上に私ひとりだ。
「ユウさんはいいよ!」
「ムリしないで」
ムリじゃない。
飛び込みたい。
真っ黒な海にジャンプした。
わっと声が上がった。
水はぐっと冷たくなっていたけれど、硬くなんてなってなかった。
髪を搔き上げて水しぶきを振り払った。
海の中に飛び込んだわたしを、みんなは褒めて歓迎してくれた。
こわくなかった。
今日はスーパームーンらしい。
まん丸い月は、写真よりずぅっと大きく感じた。
船は生間港についた。
さぁ、あしたはなにして、遊ぼうか?
新しい友達がたくさん出来た。
チエちゃんや、リュウさんや、その子ども達に、一緒に泳いだ彼や彼女。
そして、海。
・BLUE WATER ADVENTURE’S
奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ INDEX
投稿: 2014年10月9日
おひけぇなすって! 生まれは越後、勤めは東京。 作って書いて説明して、制作を生業にしたケチな女でございます。 姓はコヤナギ、名はユウ。 人呼んでコヤナギユウと発しやす。 いいえ、「コヤ次郎」とでも呼んでおくんなせい。 フ […]
投稿: 2014年12月7日
ごぶさたしちまったなぁ! 生まれは新潟、働きは東京。 書くや書かぬやを生業に暮らす、人呼んでコヤナギのユウと発しやす。 ちょいとまえに、奄美大島のおしりにスッと寄り添った素朴な島「加計呂麻島(かけろまじま)」ってところに […]
投稿: 2015年1月26日
わたくし、コヤナギユウというケチな物書きでございます。 今日日は南。「奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ」と題しまして、小説家の三谷晶子姐さんをたずね、西にいきましても東にいきまして、とかく土地土地のおあにぃさんおあねぇ […]
投稿: 2015年2月1日
わたくし、コヤナギユウというケチな物書きでございます。 今日日はかげろうの島に候。「奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ」と題しまして、小説家の三谷晶子姐さんをたずねてまいりました。 噂に名高い、諸鈍湾のデイゴ並木。 赤い […]
投稿: 2015年4月8日
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投稿: 2015年4月8日
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投稿: 2015年4月11日
わたくし、コヤナギユウというケチな渡世人でござやす。 今日日はかげろうの島に候。「奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ」と題しまして、小説家の三谷晶子姐さんをたずねてまいりました。 なんでいこのみせは、店番の一人もいないの […]
投稿: 2015年5月5日
わたくし、コヤナギユウというケチな渡世人でござやす。 今日日はかげろうの島に候。「奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ」と題しまして、小説家の三谷晶子姐さんをたずねてまいりました。 南の島だっていうから、こちらら、カーッと […]
投稿: 2015年5月5日
風が吹けば西から東、風来坊のコヤナギユウとはあたくしのことでございます。 今日日はかげろうの島に候。「奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ」と題しまして、小説家の三谷晶子姐さんをたずねてまいりました。 おっとっと。なんだい […]
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わたくし、生れも育ちも新潟市で白山神社で産湯をつかい、性は女、名はコヤナギユウ。 人呼んでフーテンのコヤと発します。 今日日はかげろうの島に候。「奄美大島・加計呂麻島 女もつらいわ」と題しまして、小説家の三谷晶子姐さんを […]
投稿: 2015年5月6日
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わたくし、過去の記憶を呼び起こし、さも昨日行ってきたくらいの勢いで旅ブログを書く、性は女、名はコヤナギユウ。 人呼んでフーテンのコヤと発します。 1年前の2014年9月7日から14日まで「奄美大島・加計呂麻島 女もつらい […]
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投稿: 2015年9月23日
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投稿: 2015年9月23日
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投稿: 2015年9月27日
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投稿: 2015年10月12日
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投稿: 2015年10月12日
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投稿: 2015年10月12日
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投稿: 2015年10月12日
わたくし、過去の記憶を呼び起こし、さも昨日行ってきたくらいの勢いで旅ブログを書く、性は女、名はコヤナギユウ。 人呼んでフーテンのコヤと発します。 1年前の2014年9月7日から14日まで「奄美大島・加計呂麻島 女もつらい […]
投稿: 2015年10月12日
わたくし、過去の記憶を呼び起こし、さも昨日行ってきたくらいの勢いで旅ブログを書く、性は女、名はコヤナギユウ。 人呼んでフーテンのコヤと発します。 1年前の2014年9月7日から14日まで「奄美大島・加計呂麻島 女もつらい […]
投稿: 2015年11月8日
わたくし、過去の記憶を呼び起こし、さも昨日行ってきたくらいの勢いで旅ブログを書く、性は女、名はコヤナギユウ。 人呼んでフーテンのコヤと発します。 1年前の2014年9月7日から14日まで「奄美大島・加計呂麻島 女もつらい […]
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書籍にするとおよそ4ページ分です!
コヤナギの記事は写真もいっぱいあるから、本当に本だったら倍以上のページを読んでると思う。
「活字離れ」とかいわれるけどさ、けっこう読めてるよね。
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