このレポートの表紙はこちらから。海辺の村の作品を見て、次に訪れるのは弥彦山ちかくの岩室温泉街ちかく!
こちらの作品は、現在製作中のと噂ですが……
↓何度も登場するのが忍びない手書きMAP 【P2】 って所を目指します。
この辺はホタルの里と呼ばれている、田舎の原風景が残るエリア。
かつては北国街道の宿場町として栄えた場所だとか。
矢垂川(やたれかわ)という小川を越えて、見えてきた。
あれかな? 2棟ある。
クイビーン・オフラハラさんの作品「16×10 [ awake / a father’s wake ]」 作品No.【P2】
でかい。
ちょっとしたコテージじゃないか。
入って良いのかしら。
と、躊躇っていると藁の束を抱えたおじいが歩いてきて、腰を下ろした。
「な、何やってるんですか?」
どうやら作品に使われる綱を作っているらしい。
「左びねり」と呼ばれるもので、しめ縄に使われるものと同じものだとか。
激しい新潟弁でいろいろ親切に教えてくださる。
なんか、こんな風景、バリでも見たなぁなんて思いながら。
「昔はこの辺も凄かったんだから」とおじいはいう。
元気いっぱいなセミの声と、
新潟出身の私でも聞き取れないくらい新潟弁が炸裂していて、
具体的なお話まで聞き取ることができなかった。
「とにかく今は大変だ。25日(2日後)にこれの祭があるんだ」
と、おじいはいった。
どうやら、7月から作り続けているこの作品はの完成お披露目パーティがあるらしい。
それが明後日だという。
3年前の水と土の芸術祭でも、おじいはクイビーンさんと一緒に作品づくりをしたらしい。
「なんら、なんかビンさん(おそらくクイビーン・オフラハラさんのこと)は宗教でもやってんだろかね」とつぶやいていたのが気になった。宗教?
間にあいそうですか? と尋ねると。
「やいやどうだろっかね、ビーンさんに聞いてくれ」と言った。
↑ぶっきらぼうな雰囲気だけれど、実はお話好きで親切なおじいと、根気のいる作業を感じさせる道具。このハンマーのようなもので、藁を叩き、柔らかくする。
“ビンさん”がいる作品に近づいてみる。
飛び職人のように地上5メートルはあろうかと思われる所に、命綱もなく立っているのがビンさんだ。
近づくとおじいが編んでいた縄が、大きな石を結んで垂れていた。
いったい全長何メートルくらい縄を編んだのだろう。
中に入ると、なるほど。
おじいが言っていた「宗教」の意味が分かった。
……何か鬼気迫るものがある。
海抜が低く水害に悩まされ続け、歴史を重ねてきた新潟。
そんな水と土に苦闘してきた父祖たちの霊を鎮魂する野外作品だそうだ。
作品に使われている藁は地元産の竹木葦草で、階段などの建具はどうやら廃材のようだった。
この白い布はよく見ると包帯やガーゼで、医療用のものを安く譲ってもらって使用しているそうだ。いよいよ怖い。(笑)
ビンさん自身はにこやかで、怖さはまったく感じない。(当たり前か)
おじいと同じく、しきりに「25日にオープニングパーティが……」と言っていた。
2階に上がることができる。1階にいる母を見下ろしてみた。
もう一棟の方も見に行ってみた。
こちらも内部で日本人の男性が作業し、「めざめ」と赤い文字で書かれた白い布を設置しており「とにかく25日までに、あと2日なんで……」と一心不乱に作業していた。
↑そんな苦労を知る由もない通りすがりのシオカラトンボ。トンボも好きな虫だ。
「頑張ってくださーい、お邪魔しました」と声を掛け、小屋を出る。
すると、こんなのを発見。
↑小川で冷やしているスイカと麦茶。
なごむね~。
さて、そういえば私も喉が渇きました!
岩室温泉の観光施設「いわむろや」で一休み。
岩室特産の白ナスも販売している。
白ナスは皮が柔らかく焼きナスにすると最高に美味しいのだが、その繊細さゆえ県外への出荷が難しい。機会があったら一度はご賞味いただきたい逸品だ。
飲み物も、せっかくだからご当地ものを。
巻町の伝統玩具「鯛車」をモチーフとした「めで鯛ザー」
……いやはや全然知らないし、「鯛ザー」と「サイダー」ムリがあるし、中は普通のサイダーだしってところは、ゆるさに免じて欲しい。
「鯛車」の発祥は不明だが、少なくとも江戸時代からは伝わっているらしい。
晩夏の頃になると中にロウソクをともし、子供が引いて遊んではその季節の風物詩になっていたそうだ。
一度は失われた伝統だったそうだが、このほど復活させたとか。
今、サイトを調べてみたら、ティファニー財団から伝統文化伝統文化振興賞をいただいたり、BEAMSから発売(!)したり……
な、なかなかステキなアイテムに見えてきました。
そんな「ありが鯛」サイダーでのどを潤わせ、「いわむろや」向かいの作品をハントする。
西村正徳さんの作品「陽だまりハウス」 作品No.【46】
ビニールハウスに明けられた無数の穴から光の雨が降り注ぎます。
ハウス全体の色が黄色だから、そこから差し込む光は反対色の青が強く感じられて、目で見ると写真よりもっと、青い水玉模様が広がって見えます。
↑「雨に唄えば」
いよいよ温泉街突入。
メイン通りから車では入れない小道に逸れ、元美容室とおぼしき民家に、作品があるようですが……
戸井田雄さんの作品「根底/Roots」 作品No.【47】
私たちはよく、何かを求めて遠くへ行く
まるで近くのモノはもうすべて知っているかの様に
なるほど、「Roots」ですね。
なんてことない民家の玄関で靴を脱ぎ、係員さんにご挨拶して廊下を進む。
決して広い家じゃない。
だからこそ、ぎょっとした。
「根底」ですね。
帰り際、係員さんに「入口の美容室の所にも、作品があるので見ていってください」とのこと。
一見、美容室の廃墟だけど……なんかへん。
じーっと鏡を見ていたら、あれ?
動いてる!
これは木村恒介さんの「ある風景の呼吸」というもの。
岩室温泉では「水と土の芸術祭」に合わせ、独自の市民プロジェクト「岩室温泉まるごと美術館!」とし、武蔵野美術大学と共催して至る所で作品を展示中。
そういえば、ここに来る道すがら作品近辺に立っているのぼりがやたら立っていたっけ。
温泉に入るついでに、ゆっくり探索してみるのも良い。
ちなみに、岩室温泉は私も大好きな場所で、強すぎない硫黄と豊富な源泉が特徴。
趣のある温泉宿もあれば、たちより湯もある。
私の行きつけは「多宝温泉 だいろの湯」
50帖分の大露天風呂がお気に入りなんだけど……ん? 微妙に岩室じゃないのか?
「水と土の芸術祭」も参戦4日目で心得を得た。
それは“作品鑑賞は時間との戦いである”ということ。
展示時間にも滞在時間にも限りがある。
ましてやこんなに広い「水と土の芸術祭」だ。
道に迷うことを計算して、移動時間を見積もらねば……
到着したのは巻郷土資料館。
ここに、作品「のぞきからくり」作品No.【48】があると言うのだが……
あったー!
……けど、公演時間は終了。
「のぞきからくり」とは江戸末期に誕生し大正時代に楽しまれた大道見せ物。
西蒲区にて中ネタ(仕掛け)が見つかったそうなのだが、原型に近いものはここを含め数カ所しか保存されていないそうだ。
YouTubeで検索すると見ることができる。
出来れば口上と一緒に見てみたかったけど、終わってしまったものは仕方がない。
もう一カ所、「51」の潟東歴史民族資料館を目指す。
しかし……
「すいません~。もう17時で閉館なんです……」
MA JI KA!!!!
さすがI NA KA……。
仕方がない。
今日の鑑賞はこれにて終了。
明日からは小須戸で作品 【54】 になるのだ。
西野達さんの作品。
作品名は「知っているのはお前だけ」
……ん? あれ?
そういえば担当の方から連絡ない。
明日、行っても、いいんだよね?
※執筆中の9月7日現在、友達のシャチョーが8日まで「お前だけ」になってます。お近くの方は鑑賞しに行ってみて。