このレポートの表紙はこちらから。。真夏の新潟の海は青い!
西海岸~日和山を満喫して、古き良き新潟の歴史が残る西大畑エリアへ。
今一番求めてるのは、冷房です。
↑汗で溶けているガイドブック
前回のレポでは私の手書きマップを載せたけれど、
展示物巡りには私も公式ガイドブックのマップを参考にしていた。
いくら出身地とは言え、新潟の町は広い。
おまけに政令指定都市になったため、私がいた頃の新潟と地名まで変っている。
そうでなくてもこんな、市街部裏手の歴史アリエリアなんて、学生は立ち入らない。
車で通ったことはある気がするけれど、ほとんどが初めて歩く道だった。
コヤナギMAP018
まず最初に訪れたのは、新潟出身の作家・坂口安吾の記念館でもある「安吾 風の館」
元市長公舎だったお屋敷は、こぢんまりとしながらも趣がある。
ここは確か、むかしに高森神楽を見に来たような……?
いや、その先の「砂丘館」か?(当時のモブログ1.2.3)
庭に展示されていた坂爪勝幸さんの作品「〈レクイエム〉のための茶室と舞台」 作品No.【29】 をチラリと眺め、冷房の効いた「尾崎士郎」展示室へ逃げ込む。
尾崎士郎とは坂口安吾と同じく昭和初期の作家で、尾崎士郎が師と仰ぐ人物の作品を、坂口安吾が雑誌で酷評したことに端を発する。
尾崎士郎は出版社経由で坂口安吾に血統を申し込む。その後、酒を飲み、上野から浅草、吉原まで飲み歩いたあげく、帰宅した坂口安吾は吐血。「坂口士郎の決闘に打ち負かされた次第」と、意気投合した様子を書いていた。
展示物の中心は二人の間に交わされた書簡で、メールはもちろん電話も不自由だった時代に、今のメールのような調子で手紙が送られている。
大義名分を付けて飲み会をやる誘いや、酒の席で言いすぎた言葉の謝罪など、どれも日常的なものだが、小気味よいテンポとセンスある言い回しでどれも面白く、味わい深い手紙だった。
尾崎士郎が戦後に戦犯として名を上げられる噂が立ったとき、「自分に罪があるのならこれといった作品を世に残せなかったことが一番の大罪だ」という旨の手紙を、安吾へ送っており、胸に刺さった。
(手紙は「だから自分には果たせなかったことを、安吾には果たして欲しいと頼む内容だが、安吾は「あなたはそれでいいとしても、僕には僕のなすべきことがある。あなたもまた軽々しく運命を甘受すべきでない」と返してる)
また、安吾は当時起きた大事故を見て、いつ自分が死ぬか分らないと考えて、士郎に「遺言書」を証人として送っている。その内容は、内縁の妻、三千代を想う物だったのも興味深い。
新潟からこんなに、粋で洒落のある作家が生まれていたなんて、知らなかった。
出来れば新潟に留まっていて欲しかったけれど、東京で働いている私には何も言えない。
クーラーで涼を得て、次なるターゲットを絞り込む。
どこへ行こう。
このへんには作品がいくつか連なっているけれど、まずどこから見れば良いか……
地図とじーっとにらめっこしていたら、ガイドブックの折り目(出版用語では「のど」という)に変な名前の道を見つけた。
「地獄極楽小路」
こ、こんなほっそい道に相反する2つの世界のハーモニーが!?
急いでいってみると、なんてことない、普通の道。
西大畑公園の裏手入口にさしかかって、この道の由来が分った。
ここはかつて刑務所があり、道を隔ててその向かいは、現在も営業を続ける老舗の高級旅亭「行形亭(いきなりや)」
道を隔てて天国と地獄がある道、ということだそうな。
ナルホドね~。
さて、公園内で作品発見!
コヤナギMAP09
近藤洋平さんの作品「harmony」 作品No.【30】
すき間と鏡がついた「壁」で、壁の正面に立つと不思議な体験が出来る。
なんだかチグハグ!
なんだか……おもしろい!
スタンプをゲットして次の目的地へ。
やってきました。なになに?「旧斎藤家別邸」?
コヤナギMAP10
今年(2012年)の6月に一般公開が始まったばかり。
新潟三大財閥の豪商・齋藤喜十郎が、大正時代に夏を愉しむためだに立てた避暑用の別邸。
ここが、個人的にかなりツボでした。
関内では500円でお茶とお菓子がいただける。
作品や館内を楽しむ前に、まずは一服。
「夏」と「庭鑑賞」を楽しむために、大きな窓は北側に作られている為、強い日差しは入り込まない。
また、どこからでも風が抜けるように作られた設計で、ちりんちりんと風に揺れる風鈴の音が、これでもかと染み渡る。
新潟に、こんなところがあっただなんて。
関内にはボランティアの解説者の方もいらっしゃって、幸運にもマンツーマンで案内してもらえることに。
やった!
まずは「みずつち」の作品を拝見しに、蔵へ案内してもらう。
この建物に展示してあるのは、
照屋勇賢さんの作品「旧齋藤家別邸におけるNotice-Forest インスタレーション」 作品No.【28】
暗がりにビニール袋がぶら下がっているようだけれど、蔵の中に足を進めて歩いてみる。
私が歩くと小さく風が起こり、それでふわっとビニールの影が揺れた。
「あっ」
床に映し出されたのは、旧齋藤家の庭で涼を運ぶ鯉の姿。
ゆらりゆらりと泳いでいた。
「作品は2階にもあります。この屋敷は庭を眺める為に作られたのですが、この時代の建物では珍しく、上から庭を眺めると言うことも設計されているんです」
見下ろす日本庭園と、モダンな手すり。
そこに作品が展示してあった。
「一度も糊で繋ぐことなく、切り抜いて落とすことで作られています。
これは庭にある紅葉を表現した物です。
これはマクドナルドの紙袋ですが、
こちらもニューヨークでは有名な衣料量販店の紙袋だそうで」
「紙袋で作品を作っているのは、“紙はもと木だ”という思いもあるんだとか。
作家の照屋さんがここにいらして、庭の写真を撮って、作品を作って来られました」
え!?
「ですから、この作品の対になる木が、この庭にあるんですよ」
……確かに、この松は、あの松!
切り絵(立体だけど)を付け足さないのはもちろん、着色なども行っていない。
しかし、ちょうどいい袋を見つけてきたもんだなぁー……。
「旧齋藤邸別宅」への思いが募りすぎたので、次回へ続きます!