このレポートの表紙はこちらから。お土産屋さんでの興奮を抑えるため、旧水産会館の2階に上がり、
作品を見ることにしました。
「旧水産会館」の2階に上がると、学校のような趣のある雰囲気に包まれた。
メイン会場は主に4つの建物からなっている。
一番小さいのが「面白半分製作所 03 」で、元は長岡中央水産や北日本石油事務所などが入っていた休憩所。
一番大きいのは、そのアーチ状の屋根から「大かまぼこ」と呼ばれる建物。
朝には競りを行ったり、水揚げ、荷捌きを行って活気があった所。
その1/3ほどの大きさの「小かまぼこ」と呼ばれるサブの魚の荷捌き所。
そして、メインゲートにもなっている「旧水産会館」は2階建ての建物なっている。
1階は巻き網やコンベアなどの機械類をもったハイテク荷捌き施設。
2階は新潟漁業協同組合などの団体の事務所だったそう。
「新潟漁業協同組合」そう、あのお土産品に使われていた手ぬぐいの団体だ。
なんとなく嬉しい。
アートって、何なんだろう。
それは大き過ぎる問いなのかもしれないけれど、少なくとも、
私には身近な物ではない気がする。
職業がデザイナーで、アーティストの友達がいて、身近な気もするけれど、詰まるところ分らない。
たとえば今回、友達を一緒に行こうと誘わなかった。
それは、東京から遠い、ということもあるけれど、
絶対見た方が良い、だとか
絶対に楽しい、だとかいう種類のイベントではないから。
いろいろな作品はあるけれど、
やっぱり、アートは誰でも手放しで楽しめる物じゃないと思う。
分らない物は、分らない。
つまらない物は、つまらない。
けれど、つまらない物が下らない物かと言うと、そうじゃない。
そこが難しい。
崇高なアーティストが描いた抽象画と、
幼児が描いた落書きの差を、私は直感的には感じ分けられない。
アートは、難しい。
そう考えていた。
だから、このイベントには一人(+7つ道具としての母)で遊びに来たのだ。
新潟出身の私が、とある目的で、遊びにきた。
そんな動機でもいいだろうし、立派なきっかけだ。
頑張って「面白がろう」そう思っていた。
大小合わせた部屋の中に13組の作品がひしめき合っている。
タノタイガさんの作品「水先櫓(仮)」 10
元気よく扉などを突き破っているが実は床も天井も突き破っている。
一番広い部屋「あかひげラウンジ」 11 に展示してあった旗。
よく見るとカラフルな布に書かれた応援メッセージで埋め尽くされていた。
日比野克彦さんの「種は船プロジェクト」にて、舞鶴から新潟への航海を軌跡が展示してあった。
アートユニットKiKiKoの作品「汽水域」 16
淡水と海水の混ざり合う場所を、
透明感のある釣り糸を部屋中に渡らせた巨大なトリングスで表現している。
うまく写真で伝えられないのだが、実際に歩いていると遠近感が曖昧になり、
まるで水の中に居るような不思議な間隔になった。
そしてポッと、
「アートって楽しいな」
という気持ちが胸に浮かんだ。
こちらは
佐々木秀明さんの作品「雫を聴く」 12
個室に入って戸を閉める。
最初はただ薄暗いだけの部屋だが、動きを止めてじっと息をひそめているとドキッとするくらい大きな音で雫が落ちる。
少し歩けば、足音や服が刷れる音で水が落ちる音なんてかき消されてしまうのに、静寂の中ではこんなに存在感があるのだ。
そして、貯まった水はレンズになり、アスファルトの床に独特の影を落とす。
雫を目で聴く事も、できるのだ。
やばい。
やばいやばいやばい。
これはヤバいかも。
ナゾの興奮に包まれながら、すっかり整理出来ない感情に揺さぶられ始めた。
まだ一番の「お楽しみ」を見てないのに。
今はまだ、この気持ちを「ヤバイ」以外に表現出来ない。