ヘイヘーイ!
更新自体2ヶ月ぶりなのにもかかわらず、ニュージーランドブログの続きをしれっと書き始めるコヤナギユウだよ。
今日はテカポを去る日。
このまま空港を目指して、7日間一緒に旅をしたレンタカーを返し、冒険の日々を終えるのだ。
霜降る早朝のテカポ湖。
初めてのキャンピングカー旅の相棒と別れるのは淋しいよ。
テカポといえば星空の美しさで世界遺産登録しようとしている小さな村。
でも、いまやニュージーランドといえばテカポっていう人も多くなった。
(全天球カメラThetaで撮ったテカポの湖畔)
テカポでの様子は昨日のブログを見てもらうとして、なぜテカポの星が美しいのかというと、これです。
ジャーン!
世界暗闇保護区なのだ。
クライストチャーチへのハンドルをしっかりと握り、昨夜の余韻に浸りながら、これまでの旅を振り返る。
初日から飛ばした6時間のドライブ。
憧れの駅舎に会い、湖畔での美しい星空を眺めたダニーデン。
初めての野宿がマイナス7℃を記録したクイーンズタウン。
機材を背負って暗闇の中3時間歩き、日の出を狙って失敗したマウントクック。
あげく撮らないうえに飲んだくれた夜。
そして七夕に巡り会えたテカポの織り姫と彦星。
クイーンズタウンに近づくハイウェイは、やがて味気ない幹線道路になり、人の気配とともに絶景は消え、感慨深さを感じるまでもなく空港に着いた。
滞りなく“相棒”のキャンピングカーもさっぱりと返却し、Booking.comで昨夜適当にとった空港近くのホテルにチェックイン。
今日は帰国までのボーナスタイムパート1。
飛行機に乗るまでの調整日。(オークランドでも乗り換えついでに1泊する)
わたしのニュージーランド旅は終わったも同然なのだ。
まったく観光しなかった南島で一番の繁華街、クライストチャーチを少しは見て回ろう。
ローカルなバスに軽装で乗り込んで、気分は地元民だ。
車窓から眺める街並みは、ビルも点在しているけれど、空き地の多い印象。
時折見えるコミカルなグラフィティにシャッターを切る。
傷跡そのまま、大地震から5年のクライストチャーチ
そうだ。
2011年2月22日。
クライストチャーチはマグニチュード6.1の大地震に見舞われた。
東日本大震災の、2週間前に起こった。
市街地の大きなビルは倒壊し、死者・行方不明者は240人にも上った。
クライストチャーチという町の名前は、ある教会に由来している。
クライストチャーチ大聖堂だ。
町のシンボルでもあるこの教会は5年前の大地震で大きく倒壊した。
日本であればすばやく復旧するだろう。
でも、この街の人たちは、この姿のまま残すことを選んでいた。
補修するには立て直すしかなく、町のシンボルを完全に壊してしまうことに抵抗を感じるひとたちと折り合いが合わず、この姿でいまも自然の爪痕をあられもなく見せていた。
教会の中はもちろん人間が立ち入ることは出来ず、暮らしているのはもっぱら鳩たちだった。
教会の前には簡易的な祭壇が立ち、教会に祈りを捧げることが出来る。
日本だったらすぐに立て直して、地震の爪痕をなかったことにしてしまうだろう。
いろいろな事情があるにせよ、こうやって5年たっても倒壊したままの建物が、この教会だけでなくたくさんあった。
(中には屋上と最上階である4階、3階は倒壊して立ち入り禁止だけど、1.2階は通常営業してレストランも結婚式もやっているホテルもあった)
外国だなぁと思う。
したたかに、淡々と。毎日を紡ぐ街。
特にビルの倒壊が相次いだエリアは、銀行も専門学校も密集する街の中心地だったそうだ。
そこはいま、コンテナビレッジになって、美味しいホットドックから、こだわりのコーヒー、かわいいお土産雑貨まで販売し、注目のエリアとして観光客と地元の人で賑わっている。
(コヤナギもランチにラム肉のホットドックを。ぶりゅん!とはじける噛み応えは思い出すだによだれが出る)
観光客用の短距離を走る路面電車。
町中に傷跡を堂々と残すその様は、日本人のわたしから見るとちょっとギョッとしてしまったけれど、もっと驚いたのは誰も悲観したような顔をしていないことだ。
ひょうひょうと、いつもの毎日をつむいでいる。
昨日から今日へ、そして明日へ、淡々と。
プラスチックで出来たヒツジが転々としていた。どうやらベンチらしい。
なにかコンセプトアートらしいんだけど見つけられなかった。
コンテナエリアにあったハンドメイド雑貨屋のゆるいやつ。
同じくコンテナエリアにあった郵便局。テカポで書いたお葉書に切手を貼って投函した。
また出会ったヒツジ。
なんかとにかく、街全体が「平熱」なんだよなぁ、なんて思った。
紙で出来た教会カードボード・カテドラル
……ハッ。
いけない、いけない。
取材で来てるんだし、なにか特別なところがあるなら見ておかないと、と思ってやってきたのがこちら。
半壊してしまった街のシンボルに代わって新たに建てられた教会。
この教会、紙で出来てるんです。
サランラップの芯の強いやつ、といった感じの紙管を組み合わせて作られた建物は、なんと日本人設計。
紙独特の柔らかな質感が感じられる。
この教会は別に観光地用の飾り物というわけではなく、普通に教会として活用されており、この日はどこか学校の催し物があったみたいで、たくさんの子ども達がおそろいのガウンをまとって集まって、室内は暑いくらいだった。
なにかお祝い事だったのだろう。神父さんも嬉しそうだ。
教会を出ると虹が出ていた。
虹を見た街の人たちは、声を挙げるでもなく、すこしだけほほえんだ。
やっぱり、平熱なんだよなぁ。
スーパーマーケット万歳! 安さのパックンセーブ、品揃えのニューワールド!
ダニーデンでお世話になった写真家の中村太一さんご一家が、ちょうどクライストチャーチにいらっしゃるということで合流。どこか行きたいところがある?という問いに、わたしが答えたのが……スーパーマーケット!
キャンプ生活してる間「New World(オシャレで品揃え良いけれどやや高い)」と「Four square(田舎にしかないスーパーとコンビニの中間みたいなやつ)」というスーパーに通っていたんだけど、お土産を物色するならもっとオススメのところがあるとか。
「ばらまきようならここがオススメ」と連れていってもらったのが、黄色い看板が目印の「PAk’n SAVE(パックンセーブ)」!
見て、このコストコを思わせる迫力の陳列。
別にプロの店とかじゃないです。
ただのスーパーマーケット。
お土産用にはチョコレートなんかを買い込んだんだけど、美味しそうなものがいっぱいだし、やっぱりニュージーランドはパッケージデザインが進んでると思う。(日本が文字訴求過ぎてガラパゴス化してるって話かも知れないけど)
魅力的なソース達。キャンプ初日に買うととても重宝するし、お土産に持って帰ればすぐに思い出の味を再現出来る。
ニュージーランドといえば羊だけど、実は数年前に「中国に牛乳が売れるから牛を飼え!」と政策が方向転換した時期があって、ドライブしていると牛がいっぱい見られる。残念ながら「中国に牛乳を買ってもらう作戦」はあんまりうまくいかなかったみたいなんだけど、おかげでニュージーランドはヨーグルト・チーズと行った乳製品が安い、美味しい!!
日本では見ないような、パウチに入ってチュウチュウ吸うヨーグルトなんかもあって、こちらもパッケージがかわいらしい。
常温保存できるなら、日本に連れて帰りたかったよ。安いし。
南島最後の晩餐と“今夜は寝なくていいですか”
夕ご飯は中村さん達のお友達で、料理人のご夫妻も加わって少し良いグリルレストラン「LONE STAR」へ。
(夜が暗いのが外国の好きなところ)
扉を開けると往年のスター達が出迎えてくれます。
広い店内には暖かい灯りと、大きな暖炉が炊かれ、大人なムード。
だけど、これはこのお店だけじゃなくて、国全体が子どもに寛容というか、こんなに大人向けって感じのお店でもちゃんと子供用の椅子は完備だし、おもちゃや塗り絵だってなにも言わなくても店員さんが持ってきてくれる。
大人達のテーブルへ最初にやって来たのは、ほわほわの、ほかほかの、パン!
これまたふわふわにホイップしてあるガーリックバターを塗って食べるんだけど、これだけでOKってくらい美味しい。
そんなわけにもいかないので、まずはドリンクを。
ニュージーランドらしいものはなにか聞いたところ、南島は白ワインが有名らしい。
なんでもSauvignon Blanc……ソーヴィニヨン・ブランっていうの? その品種がとれるらしい。
じゃーそれ、それにします! ソーヴィなんとかってやつにします!
やってきたソーヴィなんとかブランは、見た目はクリアな無色透明って感じだけど、グラスに口を近づけた途端、包まれるのはさわやかな花の香り!
ブドウの花なんて、思いつかないけれど、なんというか、きっと白くて小さな花がいくつもいくつも咲いていて、そんななかに顔を埋めるような、そんなやさしい香りがする。
(ブドウの花を画像検索したら偶然にもだいたいそういう見た目だった)
そして味は、低刺激でさわやか。
おお、ソーヴィなんとかブランよ、きみはなんと“平熱”なのだ。
グリルレストランだから、メインはもちろんお肉をオーダー。
何の肉かって?
ラムチョップ一択でしょ!
平熱のソーヴィニヨン・ブランにいい気持ちにさせられたところ、暖炉を背負って後光が差しているような格好になっている中村さんが、いたずらっぽく耳打ちした。
「コヤナギさん、今日が南島最後の夜でしょう? じゃあ、今夜は寝なくて、いいですか?」
美味しい食事に満たされたあと、再会を誓って別れる夜。
ホテルに送ってもらっていったんは部屋へ戻ったけれど、すぐに鍵を閉めて出てきた。
迎えに来てもらった車へサッと乗り込み、見知らぬ道を30分ほど走って行く。
そこは人影のない、湖畔の湿地帯。
酒屋で買ってきたシードルを胸元にしのばせて、わずかな光だけで足元を照らし、秘め事を共有する。
背丈ほどある葦をかき分けて、ここ、と決めた場所に腰を据えた……三脚の!
というわけで、もう昨日で最後だと思っていたニュージーランドでの星空撮影、泣きの1回。
まさかのもう1回!
さっき食事で同席した、中村さんのお友達で料理人のアンジさんが、中村さんからカメラを譲ってもらったとのこと。
それで星空撮影に挑んでみたいということでクライストチャーチ在住のアンジさんが秘密の撮影スポットに案内してくれたのだ。
今夜の撮影はもう、道楽。
星にピントを合わせたら、わいわいお酒を飲みながら、タイムラプスで撮影して写真の写りを楽しんでいた。
そう、おまけの1回だった。
今回、わたしはこの旅に「ニュージーランドでオーロラハント(仮)」と名付けた。
なぜ「仮」としたかは、レポートの最初に書いたように、遭遇率がとっても低いからだ。
こればっかりは努力のしようがない。強いて言うなら一週間くらいしかいられない、わたしが悪い。
だから、昨日で最後の撮影を終えたテカポでも、とうとうオーロラは撮れなかった、という結末に満足していた。
市街地から近くてもこんなに光害(ひかりがい)が少ないロケーションに、星空撮影クラスタとして3人でキャッキャしつつ、度の星が見えるだとか、あれは街灯で、霧が出てきた、なんて話をしていた。
「あれ……オーロラじゃないですか?」
弱いオーロラは白くぼんやりとしていて、初めて見た人には雲と見分けがつかない。
でもわたしたちは、いままで何度かはオーロラを見てきたし、中村さんに至っては間違いなくプロだ。
だから、わかった。あの、しろっぽいやつ、動いているぞ。
あれ、サザンライト……南半球に出るオーロラだ。
撮れた、撮れてしまた。
あの向こうには海しかない、光源のない場所に赤いカーテンがそよそよとたなびいていた。
弱く、けれど、1時間近くゆっくりと出ていた。
ダメだと思っていた「ニュージーランドでオーロラハント」は、こんなにもドラマチックなタイミングで(仮)がとれて、その姿を現した。
撮影はタイムラプスにお任せして、1時間たっぷり出現していたオーロラをいろいろな手法で収めようとしていた。
今回、Thetaという全天球カメラを持ってきたので、オーロラも映らないかなぁと思って撮ってみた。
タイムラプスをしてるメインカメラから離れて、三脚を立ててみたけれど葦が高くてうまくいかない。
だけど、偶然タイムラプスに自分が写り込むことが出来た。
まさかのサザンライトといっしょのセルフィーだ。
確認するために、少し写真を明るくしてみるよ。
(左下にコヤナギあり)
ホテルに帰ると胸がいっぱいだった。
だけど、体力も限界で、さっきみたオーロラが夢でもいい、と思った。
撮れてなくても、あの感動を味わったことは事実だから、それしか残らなくてもいい。
飛行機さえ乗り逃さなければ。
ニュージーランド滞在は明日で最後。
明日は乗り換えのためおまけで一泊することにしたオークランドだ。
ニュージーランド最大の都市。
もう都会でのふるまいが、どんな感じがすっかり忘れてしまってけど、そんなことすら、どうでもいいや。
中村さん、アンジーさん、ありがとうございました……ムニャムニャ。
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