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源泉は化石海水!? 世界的にも珍しい日本三大薬湯のひとつ松之山温泉

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SUCCESS!

石油のような香りのする天然温泉がある、と聞いたら誰もが眉をひそめるだろう。

しかもそれが「日本三大薬湯」だというならば、温泉好きでなくとも手ぬぐい片手に立ち上がりかねない。

「草津温泉(群馬)」「有馬温泉(神戸)」に並ぶ薬湯、「松之山温泉」は新潟にある。

 

 

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妻有大地の芸術祭の開催地、山あいの小さな温泉街。

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新潟と長野の県境に「松之山温泉郷」はある。

県道578号線を挟んで300mほどに温泉宿が並ぶ。

対向車とのスレ違いはなかなか難しそうな道幅だ。

 

ちょっと変わった“奇祭”が好きな方なら、その年に集落の女性と結婚する新婚男性を高さ5メートルの雪の上から投げる「婿投げ」を開催してる土地、といったら分かるかも知れない。

 

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「婿投げ」祭りを説明するジオラマ人形
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実際に婿を投げると思われるお寺はかなり急斜面に建っていた

 

そんな自然と伝統が根付いているほか、3年に一度開催されるアートイベント「大地の芸術歳」の作品も近くにある。

雪解け水で水量が増した不動滝と、絶え間なく湯気をはき出す湯やぐらがトレードマークだ。

 

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開湯700年ともいわれており、「上杉謙信の隠し湯」という2つ名も。

7つの源泉(鷹の湯、庚申の湯、鏡の湯、湯田の湯、じょうもんの湯、湯坂の湯、翠の湯)があり、すべて自噴。塩分が強く、戦後は塩の採取を行っていたこともあるらしい。

 

温泉櫓の向かいには、築100年の古民家を移築した湯守処「地炉(じろ)」があり、4〜11月の土日には「米粉バケットの囲炉裏焼き」などのワークショップを開催。

私が訪れたときは残念ながら冬季期間だったため閉館中だったが、入り口の足湯は利用できる。

ただし、かなりの高温なので注意が必要だ。

 

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温泉街は、夜にはしっかり暗くなる、古き良き温泉街といっていい。

ちなみにマンガ「頭文字D」の作者しげの秀一さんの出身地でもあるそうだ。

 

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バリアフリー対応が嬉しい、ひなの宿ちとせ

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素朴な温泉郷の中で、ひときわ輝く大きな温泉宿が「ひなの宿ちとせ」だ。

2012年にリニューアルオープンし、バリアフリー化。共有部分を含むすべての床が畳敷きで歩いていても気持ちがいい。

3つの露天風呂の源泉は鷹の湯。

客室も広々としており、なによりすがすがしい清潔感がある。

 

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エントランス
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奥のこたつが嬉しい客室。

 

 

化石海水に抱かれながら見上げる月見の湯、湯上がりには限定30個のゆで卵を

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「ひなの宿ちとせ」の源泉は鷹の湯。85.5度という高温でわき上がり湯量も豊富。お湯の色は茶褐色をしていて塩分が強く、石油のような独特の香りがある。もちろん、油が含まれているわけではない。

そもそも、なぜ雪深い山中にあるこの温泉郷の源泉が塩水なのか。一説によると1200万年前の地殻変動で閉じ込められた海水が、マグマによって温められ、活断層から噴出する「地尾プレッシャー型温泉」だからではないかといわれている。

つまり、松之山温泉のお湯は「会えるアイドル」ならぬ「入浴できる化石海水」なのだ。

液体でなければ博物館に飾ってるあるかもしれないもの入れるなんて、温泉ってすばらしい。

 

まずは内湯からご紹介しよう。

1階エントランスのすぐ脇にある。

内湯もゆったりと広く、浴槽の端に○行きが設置されており、頭を預けてリラックスできる。

また、となりには露天風呂もあり。

 

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湯温は内湯より少し熱いような気がするが、源泉が流れ込む吹き出し口があるからかもしれない。

下手な好奇心で手を出すと、文字通りやけどしかねないから注意が必要だ。

 

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内湯を出たところには小さなお休み処があって、アイスキャンディーを楽しむことも出来る。

また、1日限定30個だというゆで卵もおすすめ。

塩分が強く浸透率が高い松之山温泉に24時間湯治した温泉たまごは、殻をむくとうっすら茶色。わずかな塩分も感じるので、温泉の力を舌でも感じてみて欲しい。

 

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豪雪に囲まれた露天風呂「月見の湯」は男女交代制

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4階の客室廊下に灯籠が出ている。ここが露天風呂への入り口だ。

廊下の窓から覗いてみると、こんな風貌。

渡り廊下を渡って、隣の小山の上にある露天風呂まで移動するのだ。

 

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この渡り廊下はワクワクする。

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小さな脱衣所と浴槽があるだけのシンプルな露天風呂なので、洗髪などは内湯で済ませておきたい。

「月見風呂」というだけあって夜も気持ちいいのだけれど、写真は早朝で。

朝日でピンクに染まる空もいいものだ。

 

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松之山温泉のお湯は本当に温まる。

雪が残る早朝の冷気が気持ちよく感じるほど、ぽかぽかの身体に煩わしく浴衣を羽織ってお風呂を出た。

なにげなく、月見の湯の入り口を振り返ると、こんな標語が掛けてあり、「たしかに」と声に出た。

 

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料理上手な「まんま」たちがつくった、趣向の食事

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「身土不二(しんどふじ)」という言葉があるらしい。

これは、その土地のものを旬の時に食べることが身体にいい、という考えだそうだ。

これを掲げて食事を開発してるのが、地元の有志団体「まんま」。

 

加盟店ではこの「まんま」の食事を楽しむことが出来る。

 

たとえば、このときは“新・里山の前菜”として「温故知新」という4品が並んでいた。

「あんぼ」と呼ばれる伝統保存食や、「発酵豆腐」など、説明書きと一緒にいただけるのもうれしい。

 

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また、最初のテーブルセッティングの写真を見て欲しい。

 

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もちろん、ひなの宿ちとせの食事「里山のごっつお(ごちそう)」自体にも期待していい。

 

今回メディアツアーでは温泉のプロがたくさん同行しており、教えてもらった「食事の美味しい温泉宿」の特徴を教えてもらった。

それは、最初のテーブルセッティングに「お刺身がない」こと。

 

お刺身は鮮度が命。

質のいい脂であれば、放っておけばどんどん味が落ちてしまう。それを気にして最初に出さない価値感をもっている、つまり全体的な食事に求めているハードルが高い、ということだ。

 

そんなお待ちかねのお刺身がやって来た。

 

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また、特記したいのがこの「湯治豚」だ。

十日町の銘柄豚妻有ポークを温泉熱で2時間じっくり“湯治”させたもの。

美しいピンク色と柔らかな舌触りは、誰しも驚きの声を挙げていた。

 

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ピンク色の豚にはピンク色のロゼを。

 

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湯治牛ことローストビーフも美味しかった。

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写真では地味だけれど、5種類の薬味を隙に載せて食べる白米が、もう、月並みだけど、美味しかった。

少しだけ、満腹だから、一口だけ、そう言いながらついつい箸が進んでしまった。

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朝食も魅力的

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朝食は伝統の郷土料理を現代風にアレンジした新メニュー。

タンブラーに入ったとろろに、春は山菜、秋はきのこ、冬は発酵食品でコシヒカリをいただく。

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お味噌汁代わりのお鍋には、スキー板をイメージしたサツマイモが2本。

今日も楽しい一日になりそうだ。

 

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ひなの宿ちとせ

新潟県十日町市松之山湯本49-1
025-596-2525
https://chitose.tv/

 

Special Thanks

この取材は一般社団法人プレスマンユニオン主催の雪国観光圏プレスツアーで訪れ、交通・宿泊・飲食費をご負担いただきました。記事の監修・編集は受けておらず、金銭は発生しておりません。感想はコヤナギ自身の主観によるものです。

また執筆依頼もないため、自主的に記事化したものであり、PR記事ではありません。

取材にご協力いただいたひなの宿ちとせ様、ありがとうございました。

新潟雪国観光圏プレスツアー | プレスマンユニオン

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