TRIP

一度は途絶えてしまった和紙作りが体験できる、伊沢和紙工房 欅(けやき)

/
/
SUCCESS!

紙を手作りしていた時代、紙作りは冬の仕事だったそうだ。

いまみたいに「牛乳パック」の再利用で紙すきなんてもちろん出来ないから、木を育て、蒸し、皮を剥ぎ、茹でて、叩いて、線維を作り、やっと紙すきをする。

和紙の素晴らしさって、なんなんだろう。

伝統を守るのは、なぜなのだろう。

 

雪国観光圏の紡ぎ方(開く)

静かにコツコツと。雪国に育まれた伝統工芸品「塩沢紬」とユネスコ無形文化財「越後上布」

わたしたちが着ているこの洋服だって、布と呼ばれている一片のかたまりになるために、無数の糸が絡み合って織られている。意識を小さくして糸が組み合わさった仕組みを探ろうとしても難しい。でも機械化される前には、たしかに人間が手で […]

コメントなし

雪のように白くなる幻想的な「雪さらし」という漂白方法には科学的根拠があった

「雪のように白い肌」とはよくいうが、雪は本当に白くさせる力があることをご存じだろうか。 それは、残念ながら美容ではなく、伝統的な麻の布に働く効果なワケだけど。 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった 。」の書き出しで […]

コメントなし

ランチからお土産、贈り物まで揃う酒造・八海山の複合施設「魚沼の里」

「新潟」といえば「雪国」ときて「米どころ」そして「酒どころ」と続くだろう。 新潟の日本酒と一口にいってもそのスタイルは多く、いまは「これが新潟の酒」とは断定しがたい。 そんな中でも「八海山」を知らない人は下戸でもなかなか […]

コメントなし

名だたる文豪が愛した甘口の粕漬け「山家漬」

みそも醤油も昔はしょっぱいばっかりで美味しくなかったらしい、と聞いたことがある。 基本的に塩で固めた保存食で、それは漬け物にもいえる。深い雪に閉ざされている間、なんとか食いつなぐ手段であって、渋々食べるものが転じてこのよ […]

コメントなし

雪山をそばに感じながら大沢山温泉に浸る田舎のおもてなし宿「大沢館」

仕事で一度だけ、パークハイアット東京のスイートルームへいったことがある。 宿泊取材ではなく、そこに泊まるVIPとの打ち合わせで、だ。防犯を意識してかいくつかのエレベータを乗り継いでやっと到着するという別世界。マンションだ […]

コメントなし

ひと冬の美味しさを閉じ込めた津南町の「雪下にんじん」収穫体験

  春の太陽が降り注ぎ、雪解け始める3月の新潟・津南町。 ひと冬雪の中でじっと美味しさを蓄えた「雪下にんじん」の収穫体験をしてきたよ。   畑の中で越冬したにんじんはどこが美味しいの?   […]

コメントなし

知らなければたどり着けない。十日町の山中でいただく艶めく「へぎそば」そばや清兵衛

国道253号線から県道427号線に入ると、途端に道幅が狭くなる。 自然の都合に合わせた山道は突飛なほどの湾曲を描き、ハンドルをキツく切るたびに遠心力を感じ、それが山深さへの緊張感につながる。しばらくは人里もないだろう、こ […]

コメントなし

愛称は“雪ほむら”。国宝第1号の火焔型土器に会える十日町市博物館

新潟、十日町、雪国……と聞くと教科書で見たような「2階から出入りする豪雪地域」という印象が強いだろう。 もちろんそれも間違ってはいない。「なんでそんなに雪が降るのに暮らせるの?」「夏は暑いの?」などの疑問があふれかえるこ […]

コメントなし

一度は途絶えてしまった和紙作りが体験できる、伊沢和紙工房 欅(けやき)

紙を手作りしていた時代、紙作りは冬の仕事だったそうだ。 いまみたいに「牛乳パック」の再利用で紙すきなんてもちろん出来ないから、木を育て、蒸し、皮を剥ぎ、茹でて、叩いて、線維を作り、やっと紙すきをする。 和紙の素晴らしさっ […]

コメントなし

源泉は化石海水!? 世界的にも珍しい日本三大薬湯のひとつ松之山温泉

石油のような香りのする天然温泉がある、と聞いたら誰もが眉をひそめるだろう。 しかもそれが「日本三大薬湯」だというならば、温泉好きでなくとも手ぬぐい片手に立ち上がりかねない。 「草津温泉(群馬)」「有馬温泉(神戸)」に並ぶ […]

1件のコメント

まるで潜“雪”艦。
里山科学館「森の学校 キョロロ」から、美人林を歩く

新潟県の有名な温泉地「松之山」の近くに、赤さびで覆われた個性的な建物がある。里山科学館「森の学校 キョロロ」だ。 日本有数の豪雪地帯に数えられる十日町では、多いときでは30メートル近く雪が積もる。30メートルといえば、1 […]

コメントなし

 

 

原材料作りから体験できる和紙工房「伊沢和紙工房 欅(けやき) 」

yukisato-31

 

かなり山深いところに立派な建物が建っている。

「伊沢和紙工房」という看板を掲げ、地名を犬伏(いぬぶせ)というらしい。

 

ここではひとりの職人さんが、伝統的な手法で和紙をつくっており、体験の受け入れもしている。

 

yukisato-up-32
商品として漉かれた伊沢和紙たち。日本酒のラベルになる

yukisato-1

 

 

IMG_1136

 

教えてくれたのは、この土地の出身だというたったひとりの伊沢和紙職人、山本さん。

原材料となるのは、山本さんが持っている細長い「楮(コウゾ)」という木。使うのは白皮の部分だ。

 

11月に刈り入れて原木ごと2時間蒸し、表皮を剥ぐ。

干して水分を飛ばしたら、また水につけてやわらかくし、包丁で表面の茶色い皮を削り取り、また乾燥する。

そうして残った白皮を、さらに白くするために「雪さらし」も行うそうだ。

 

yukisato-up-31
はぎ取った白皮と残った木

 

和紙の原料作りはまだまだ続く。

雪さらしで漂白した白皮を取り込んだら更に煮る。

「紙煮」といって、炭酸灰をまぜ繊維を分解するのだ。

その後、水で何度か洗いながしあく抜き。

不純物を取り除いた繊維を叩き、柔らかくしていく。

 

これでやっと、よくみる「紙すき」の原料完成だ。

 

yukisato-up-35

 

時間があれば、伊沢紙工房では収穫や皮剥の体験も出来るとのこと。

季節によって仕事の内容は変わるので、要問い合わせ。

 

 

 

繊維が長くて強い和紙、それを複雑に絡み合わせる「流し漉き」

 

 

さて、いよいよよく見る「紙すき」体験だ。

まずは山本さんのお手本を見せてもらった。

 

IMG_1140

 

和紙と洋紙の違いはその強さ。

和紙は繊維が長いため、薄くても破れにくく、その精度の高さは絵画の修復作業にも使われているほど。

 

水が波のように勢いよく跳ねる。

これは「流し漉き」といって、水を攪拌しながら漉くことで、繊維が複雑に絡み合いより強い和紙が生まれるのだ。

 

IMG_1145

 

余分な水分を吸引して圧搾。

色が変わって、紙らしくなってきた。

 

IMG_1146

 

60度ほどのお湯が循環している鉄板乾燥機に貼り付ければ、アイロン掛けしたように真っ平らな紙が10分ほどで完成する。

 

原木となるコウゾの収穫からの手間に考えれば、紙すき作業なんて本当に最後の工程に感じる。

いちばん美味しいところだけを、体験させてもらおう。

 

 

めっちゃ難しい。でも、失敗しても、それは個性!

ukoaracom1
Photo by UKOARA

 

いわせて欲しい、真剣にやった。

 

山本さんのように波立たせようと枠をどんなに揺すってみても、あんなサーフィンできそうな波が出来ない。

おまけにしつこく揺すってしまったから、紙の端がよれてしまって、これは「商品」にはならないだろう。

 

紙すき職人の「職人技」の難しさがよく分かる体験だった。

 

 

IMG_1149
右上が大きくよれている

 

ただ、体験者としては失敗してしまったほうが、自分だけのかけがえのない一枚になる。

ずっと見ていたら、なんだかよれてしまった部分もなかなか良いような気がしてきた。

欠点だって個性なのだ。

 

 

「欅(けやき)」に込められた想い

体験を終え家に帰り、さぁ原稿を書こうと思ってはたと気がついた。

和紙をつくる原料は「楮(こうぞ)」なのに、施設名が「伊沢和紙工房 欅(けやき)」だ。

なぜ?

 

yukisato-up-33

山本さん「この和紙工房が出来る前、地域に出来ることはないかと有志で活動していた“けやきの会”というひとたちがいるんです。彼らの活動が礎となって、伊沢和紙工房はあるので、この施設の名前には“欅”がついています。欅の木は堅く、家の大黒柱に利用されます。大黒柱はふだん表に出て見えることはあまりないかも知れないけれど、見えないところで支えていて暮れるんです。実際に“けやきの会”は、いまも原料作りでお手伝いしてもらっています」

 

伝統の継承は、人と人との結びつきが大切なのだ。

それはまるで、和紙の繊維のように。

 

 

 

伊沢和紙工房

新潟県新潟県十日町市犬伏143

TEL:025-595-6692

受付時間:平日8:00〜17:00

体験代:800円(個人)※一週間前に予約のこと

観光局が作成したサイト「伊沢和紙工房 欅-けやき-

職人の山本さんが運営されている「伊沢和紙工房ホームページ

年間を通して和紙作りの様子がよく分かる山本さんのブログ「みつひろ徒然ブログ

 

Special Thanks

この取材は一般社団法人プレスマンユニオン主催の雪国観光圏プレスツアーで訪れ、交通・宿泊・飲食費をご負担いただきました。記事の監修・編集は受けておらず、金銭は発生しておりません。感想はコヤナギ自身の主観によるものです。

また執筆依頼もないため、自主的に記事化したものであり、PR記事ではありません。

取材にご協力いただいた伊沢和紙工房様、ありがとうございました。

新潟雪国観光圏プレスツアー | プレスマンユニオン

2018年3月13日(火)〜3月15日(木)に新潟県観光協会のプレスツアーが、南魚沼市、十日町市などを中心に実施されました。メインテーマは、雪国の智慧ともいえる文化です。南魚沼市の塩沢地区では越後上布の『雪晒し』を見学。さらに塩沢紬などを織る工房を取材しました。十日町では国宝の火焔型土器を収蔵展示する十日町博物館を見学、そしてスノーシューで美人林を歩きま …

BOOKカウンター

最後まで読んでくれてありがとうございました!

この記事は2000文字ありました。
書籍にするとおよそ4ページ分です!

もしも記事がおもしろい・お役に立ったら、シェアやフォローをしていただけると、とっても励みになります!

雪国観光圏の紡ぎ方(閉じる)

静かにコツコツと。雪国に育まれた伝統工芸品「塩沢紬」とユネスコ無形文化財「越後上布」

わたしたちが着ているこの洋服だって、布と呼ばれている一片のかたまりになるために、無数の糸が絡み合って織られている。意識を小さくして糸が組み合わさった仕組みを探ろうとしても難しい。でも機械化される前には、たしかに人間が手で […]

コメントなし

雪のように白くなる幻想的な「雪さらし」という漂白方法には科学的根拠があった

「雪のように白い肌」とはよくいうが、雪は本当に白くさせる力があることをご存じだろうか。 それは、残念ながら美容ではなく、伝統的な麻の布に働く効果なワケだけど。 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった 。」の書き出しで […]

コメントなし

ランチからお土産、贈り物まで揃う酒造・八海山の複合施設「魚沼の里」

「新潟」といえば「雪国」ときて「米どころ」そして「酒どころ」と続くだろう。 新潟の日本酒と一口にいってもそのスタイルは多く、いまは「これが新潟の酒」とは断定しがたい。 そんな中でも「八海山」を知らない人は下戸でもなかなか […]

コメントなし

名だたる文豪が愛した甘口の粕漬け「山家漬」

みそも醤油も昔はしょっぱいばっかりで美味しくなかったらしい、と聞いたことがある。 基本的に塩で固めた保存食で、それは漬け物にもいえる。深い雪に閉ざされている間、なんとか食いつなぐ手段であって、渋々食べるものが転じてこのよ […]

コメントなし

雪山をそばに感じながら大沢山温泉に浸る田舎のおもてなし宿「大沢館」

仕事で一度だけ、パークハイアット東京のスイートルームへいったことがある。 宿泊取材ではなく、そこに泊まるVIPとの打ち合わせで、だ。防犯を意識してかいくつかのエレベータを乗り継いでやっと到着するという別世界。マンションだ […]

コメントなし

ひと冬の美味しさを閉じ込めた津南町の「雪下にんじん」収穫体験

  春の太陽が降り注ぎ、雪解け始める3月の新潟・津南町。 ひと冬雪の中でじっと美味しさを蓄えた「雪下にんじん」の収穫体験をしてきたよ。   畑の中で越冬したにんじんはどこが美味しいの?   […]

コメントなし

知らなければたどり着けない。十日町の山中でいただく艶めく「へぎそば」そばや清兵衛

国道253号線から県道427号線に入ると、途端に道幅が狭くなる。 自然の都合に合わせた山道は突飛なほどの湾曲を描き、ハンドルをキツく切るたびに遠心力を感じ、それが山深さへの緊張感につながる。しばらくは人里もないだろう、こ […]

コメントなし

愛称は“雪ほむら”。国宝第1号の火焔型土器に会える十日町市博物館

新潟、十日町、雪国……と聞くと教科書で見たような「2階から出入りする豪雪地域」という印象が強いだろう。 もちろんそれも間違ってはいない。「なんでそんなに雪が降るのに暮らせるの?」「夏は暑いの?」などの疑問があふれかえるこ […]

コメントなし

一度は途絶えてしまった和紙作りが体験できる、伊沢和紙工房 欅(けやき)

紙を手作りしていた時代、紙作りは冬の仕事だったそうだ。 いまみたいに「牛乳パック」の再利用で紙すきなんてもちろん出来ないから、木を育て、蒸し、皮を剥ぎ、茹でて、叩いて、線維を作り、やっと紙すきをする。 和紙の素晴らしさっ […]

コメントなし

源泉は化石海水!? 世界的にも珍しい日本三大薬湯のひとつ松之山温泉

石油のような香りのする天然温泉がある、と聞いたら誰もが眉をひそめるだろう。 しかもそれが「日本三大薬湯」だというならば、温泉好きでなくとも手ぬぐい片手に立ち上がりかねない。 「草津温泉(群馬)」「有馬温泉(神戸)」に並ぶ […]

1件のコメント

まるで潜“雪”艦。
里山科学館「森の学校 キョロロ」から、美人林を歩く

新潟県の有名な温泉地「松之山」の近くに、赤さびで覆われた個性的な建物がある。里山科学館「森の学校 キョロロ」だ。 日本有数の豪雪地帯に数えられる十日町では、多いときでは30メートル近く雪が積もる。30メートルといえば、1 […]

コメントなし