【1月12日更新】
2012年11月4日から23日までの19日間、上毛町に滞在し、働く事と暮らす事を体験しました。
その間に感じた事をまとめました。
楽しいことばっかりだったので、意識してちょっと辛口にまとめました。
楽しかったって事だけを鵜呑みにして、実際に行ってみたら困った、なんてことになって欲しくないので。
また、過去に書いた関連記事や、これから書くものなど、このエントリーを表紙にして行こうと思います。
九州は福岡県最東端、大分県との県境にある人口8000人の「上毛町」の試み。
「ワーキングステイ」とは短期滞在の新しい移住形態で、東京などの都市部での仕事やスキルを活かして、町に貢献し、労力の対価として住む所を得て暮らしてみようと言うもの。
こういった試みは九州を始め全国で行われているが、上毛町としては初めて。
我々が暮らし始めた当初は町民の方はもとより、町長さんなどにはまだ理解頂けていない状態だった。
私はウェブマガジン「東京ナイロンガールズ」のクルーとして参加。
2012年11月4日から23日までの19日間、上毛町に滞在しました。
平野部から山間部にかけた地域で、特産品は川底柿、ゆずなど。
神社が多く、神楽をはじめとした神事も盛ん。朝廷時代の遺跡も多い。
町おこし町づくりに関する取り組みは活発で、80を越える市民団体がさまざまな角度から町を盛り上げようとしている。 ・上毛町役場 企画情報課:森繁さん、佐矢野課長
一連の試みを策画し、働きかける総元締。
森繁さんは福岡県庁出向時代に「九州ちくご元気計画」に携わり、ブランド化という地域活性が上毛町でも活かせると確信している。
また、ご自身の理想郷に上毛町がならないかとも考えており、将来の夢は「霞を食べて生きる仙人になりたい」とのこと。
森繁さんの上司である佐矢野課長は普段は物静かな保護者のようだが、地域交流を目的とした飲み会などでは率先した振る舞いを見せ、別人になる。 ・こうげのシゴト:久保山さん、あゆみちゃん
厚生労働省の委託事業「上毛町ブランド創造協議会」の取り組み。
町に存在する技術や商品を磨き上げてブランド化、事業の拡大と雇用の創出を目指し、同時に「上毛町」の認知度を上げようと言うもの。
8月に赴任したばかりの久保山さんは前職は九州大学の先生。家族を第一に考えて、豊かに暮らせる町づくりを目指している。
また、美声にも定評が。交流会で披露された弾き語り「飾りじゃないのよ涙は」は三谷さんのハートを打ち抜いた。
高校生のときはラルクアンシュエルのコピーバンドでベースを担当してたとこと。
あゆみちゃんは私達がワーキングステイに参加している間に赴任したフレッシュガール。
大学の先輩で久保山さんの友人でもある亀ちゃんの紹介で就職。
熊本より単身乗り込み、週末は趣味である格闘技の練習のため帰郷する。
テレアポで培った安定感ある電話対応が心地良い。▼エントリー内もくじ
このエントリー、とっても長いのでページ内リンクの目次を作りました。
・ワーキングステイ参加者が行った「労力の対価」
・「東京の仕事」を上毛町という田舎で行うことは可能
・上毛町で「快適に暮らす」ということ
・「暮らし」というブランド化
・コヤナギ的田舎ノマドとの付き合い方:避暑地ならぬ避忙地に
・このブログ関連記事のもくじ
・関連リンク集
▼ワーキングステイ参加者が行った「労力の対価」
住居を得るために、それぞれが持つスキルを活かして町に貢献するのがこの「ワーキングステイ」の肝ではあるが、その内容は様々。
▽子育て中心の田舎暮らし構想:村上さん
奥様と1才8ヶ月になる息子さんと、ご家族3人で参加されていたグラフィックデザイナー村上さんは、子育てに適した環境を求め、東京から福岡に移住し、もともと田舎移住希望者。
自分たちのような「子育て中心の田舎暮らし」を求める世帯に対して、どのような地域整備が有効か、そういった世帯にとって理想的な町づくりをふまえた構想をまとめて、町にプレゼンテーションするそうです。
ちなみに、村上さんのご長男ハルキくん(!)は、バイバイする時に投げキッスをくれるプレイボーイ。
▽町単位のコミュニティとインターネットインフラづくり:高橋さん
高橋さんは男性単身で参加されたWebデベロッパー。
村上さんの「子育て中心の田舎暮らし構想」に共感する久保山さんと3人で取り組む。
高橋さんの関心は町単位でのコミュニティづくり。公的な支援の上で「町づくり」に携われる事に興味がある。
また、自身のスキルを活かして町民へのインターネットサービスの普及、インフラづくりも行う。
異常な馴染み力を持ち、女性4人が暮らす我々の滞在先に親戚の兄ちゃんくらいのフラットさで入り浸っていた。
▽田舎で暮らすというリアリティ:東京ナイロンガールズ
「東京ナイロンガールズ」クルーのうち、私を除く3名は東京生まれ東京育ち。
いちばん長く滞在していた小説家の三谷さんは、詳細な「上毛町滞在ブログ」を日記形式で書き綴り、写真家で地域フリーペーパーの編集長経験のある木下さんと、モデルで「旅ガール」として各国を回っている石井さんは、上毛町やそこでの暮らしをイメージする為「マップペーパー」を作成中。
私は、東京の仕事を持ち込みながら田舎で暮らすことは出来るのか、という「田舎ノマド実験」を行うことにした。
ちなみに「上毛町ナイロンガールズ」はこの「東京ナイロンガールズ」が上毛町に暮らしている間の作戦名(?)みたいなもの。
▽仕事の種類:作業からコミュニケーションまで。インターネットが仕事のライフライン
私の持っている「東京の仕事」というのは、大きく言って広告とコンテンツの制作業。
媒体はインターネットと印刷物があるので納品データは重い。
また、PC作業の他、作業内容のオリエンテーション、提携スタッフとのミーティングなどコミュニケーション業務も多い。
物理的な距離があるので郵便を使った物品のやり取りもあるが、大半はデータ化しインターネットでの受け渡しが可能。
結論:田舎ノマドで仕事はできる
至極当然であるが本当にどこでも仕事はできた。環境が良いのでオンオフの切り替えが付けやすく、オンの場合も集中出来た。
ただし、滞在期間が1か月未満と短かった為、色々な物がまだ目新しく、観光気分が抜けなかった恐れもある。
ご近所の方の突然の来訪は嬉しくもあり、オドロキもする。
Pマークは取れなさそうだ。(笑)
田舎ノマドで実感した欠点:
・物理的距離
郵送物の所要時間が東京→福岡の下り2日、福岡→東京の上りで1日掛かる。下りの2日が謎。
・インターネットインフラ
納品をデータで行う為不可欠。
住居していた場所が山間であった為、携帯電話が通じず、また通常人が住んでいなかった家屋なので固定電話回線もなし。
ただし、電話線は大家さんが裏庭に茶室を建築する為に邪魔だから切ってしまったという事で引くことは出来るそう。
それがADSLや光回線に出来るかは不明。
・メガバンクの不在
上毛町に限った事ではないが地方銀行が強くメガバンクが不便。
3ヶ月ほど連続滞在するならばネットバンク契約が必須。
また、税金の振込など通常の銀行業務は郵便局で行った。
・東京との“時差”
労働時間自体は同じでも、活動時間帯のズレを感じた。
日常業務が終わった18時に一度連絡のピークがあるが田舎滞在時だと夕食時なのでうざったい。
また、0時ころに平気で電話がかかってくるが、田舎暮らしだと就寝時間である。
懸念点1:金銭的豊かさは捨てるしかないのか?
田舎に仕事がないか、といえばそんなことはないと思う。
若い人では常に足りないし、こちらのスキルを町の人に役立ててもらう事は出来ると思う。
ただしその対価を金銭としてもらう事は正直難しいと思うし、金銭にしてしまうと東京の規模には到底追いつかない。
私はウハウハ金銭的に豊かな人生を送りたい人ではないけれど、もうしばらくは労働を金銭に換えねば不幸になる人が生まれる立場だ。
そう言った意味で自分の楽しみを優先するような「田舎に暮らす」と言うことが、自分への甘えなのではないかと思う事もある。
逆に、金銭的に失速せず、住居を田舎に出来るなら都会に暮らす理由などないかもしれない。
懸念点2:クリエイティブという刺激
東京では毎日さまざまな催し物が開かれ、街は刺激に満ちている。
モノづくりをする人間として刺激がある所から離れ、制作物に影響はないのか、俗世と離れてしまわないかと思う。
しかしながら、上京17年目。
都市部には滅多に行かず、買物はネット。
半年に1度原宿・渋谷・新宿あたりの買物ツアーへ出かけるくらいなら、毎月打ち合わせに上京した方が純粋に刺激を受けられるのではないかと思った。
▼快適な暮らし
滞在した季節が秋ということもあり、陽の光と暖をもとめ朝方生活が実現出来た。
のんびりした町の雰囲気は初心者の運転にも向いている。
「快適な暮らし」について考えてみた。
・衣
容易に持ち込めるし買い足すこともできるので困らない。
むしろ車生活でコートは不要だった。
・食
食べ物がとにかくおいしかった。
ただし、外食する所がほぼ皆無なので自炊する必要がある。
仕事に打ち込み過ぎて食いっ逸れた場合、車を走らせコンビニに行けば良いか、とも。
ご近所の方からたくさん差し入れをいただけるので、本当に暮らすことになったら自分も畑を耕して、自分の農作物をお裾分けしたいと思った。
また、お料理の腕を研いてもいい。
・住
電気、ガス、電話のインフラが整わない地区があるというのは想像出来たが水道、特に上水道が整っていない場所がまだあることが驚いた。
滞在先は幸運にも地下水より深い浸透水だったため飲料水に困らなかったが、ここがそうでなかったら結構大変。
また、電気や灯油などはワーキングステイの報酬として提供頂いたが、実際の所いくらくらいなのか知りたい。
滞在先は町の人も驚くくらいの「仙人暮らし」だったけれど、山道の運転もふまえて困らなかった。
むしろ、「田舎」を求めてやってきた私達には特別感が高く、大変満足した。
・人間
暮らしを豊かにする上で、大切なのは「衣食住」だけではないと痛感した。
見知らぬ土地だからということを差し引いても、この滞在の楽しさを語るのに接した人々の人柄は外せない。
大家さんである吉本さんご一家であったり、大入集落・有田集落のみなさん、この試みを企てた役場のみなさんや福岡R不動産のみなさんに、実質別プロジェクトなのに良くしてくれた久保山さんとご家族、大学生レポーターのお二人、そしてこの目新しい試みに参加したワーキングステイ体験者たち。
みなさんとの人と人との触れ合いなくして「快適」はあり得ても、「楽しい」なんて感想は浮かばなかったと思う。
▼「暮らし」というブランド化
上毛町を「良くする」とはどういった事だろうか。
極端な話、上毛町が東京になれば「良く」なるのだろうか。
それは違う。
大変失礼な物言いだが、正直な話、上毛町は観光・文化・特産物において地味な町だと思う。
粛々とした文化が脈々と受け継がれた豊かな大地ではあるが、派手さはない。
しかしそれが個性だと思う。
上毛町は「上毛町にあった暮らし」とそこを楽しめる「あった人間」が集まれるように努めて欲しいと思った。
そのために親切丁寧にする必要はない。
ある程度の不便さや面倒さを活かして、それを楽しめる人にとって魅力的な町に映るよう、綿密なフィルタリングをして欲しいと思った。
流行や観光気分で来る人に荒らされて、あの良い町の人達に疲弊して欲しくない。
新しく来る人には全員「地に足の着いた良い人」でいてもらいたい。
▼コヤナギ的田舎ノマドとの付き合い方:避暑地ならぬ避忙地に
上毛町が目指す町づくりの方針とは違うかもしれないけれど、私の個人的な「自分にとって最も快適な上毛町との関わり方」に付いて考えてみた。
私はまだ単身だし、冒頭に書いたようにバリバリ稼ぎたいし、刺激も受けたい。
永住は難しいが「多拠点居住」というのは現実的だと思った。
本当は、バカンス気分で仕事なんてぜーんぶ放ったらかして遊びにでも行ければ良いが、「バリバリ稼ぎたい」ので現実的じゃない。
けれど、暮らす場所と少し変えれば、ちょっとしたオフタイムでも大いなるリフレッシュになる。
大きな仕事が終わった時、または逆にしっかり取り組みたい大きな仕事がある時に、腰を据えて取り組む拠点があったらすごく良いと思った。
10万円のマンションを東京に借りるのではなく、4万円のアパートを東京に、3万円の家を田舎に持って、月3万円の交通費で行き来すれば良いのだ。
幸い、私は移動好きだし。
そこに愉快な仲間たちが集まる場所があれば、なお良い。
生まれ育った新潟で暮らした年月と、東京で過ごした年月が2013年にイコールになる。
上毛町の先行きも気になるが、私自身の行き先も考えるときかもしれない。
ま、バリバリ稼ぎながら考えます!
▼このブログ関連記事のもくじ
【準備編】
・#TNG_KNG 01 職場はスタバだけじゃない! ワーキングステイと言う名の田舎ノマド実験するよ
・#TNG_KNG 02 初めてのLCC(格安航空会社)利用。朝6時発のジェットスター、旅程確認メールが届きやしないよ
【日記調途中まで】
・#TNG_KNG 03 2012.11.04 福岡県・上毛町暮らしスタート!
・#TNG_KNG 04 2012.11.05.6 滞在している「雁股庵(かりまたあん)」の環境紹介
・#TNG_KNG 05 2012.11.06 初の外食! 「上毛町ブランド」と大池公園、大入貴船神社
・#TNG_KNG 06 3日目 近所散歩と500円ランチ 2012.11.07
【スポット紹介(五十音順)】
・上毛町で買い物:イオンモール三光(さんこう)/100円ショップ、本屋、日用品、調味料、灯油 #TNG_KNG
・上毛町で楽しむ:いぶきの里・こうげの食卓 もくもく/米粉たこ焼き、無料木工場、野外ステージ、レストラン #TNG_KNG
・上毛町で食べる:からあげ聖林(ハリウッド)本店/赤い彗星、かたかわ、500円ランチ #TNG_KNG
・上毛町で働く:こうげのシゴト事務所・上毛町ブランド創造協議会/簡易コワーキングスペース化でヒューマントラフィック #TNG_KNG
▼関連リンク集
【東京ナイロンガーズ】
・上毛町ナイロンガールズ|ウェブマガジン「東京ナイロンガーズ」内カテゴリ
・三谷晶子の日々軽卒。2012年11月|小説家の三谷さんによる上毛町滞在日記
・まめにっき 上毛町ナイロンガールズ|写真家の木下さんによる上毛町写真
・旅ガールブログ 2012年11月|旅ガールの石井さんによる上毛町滞在日記
【ワーキングステイ体験者】
・Piton ink.|グラフィックデザイナーの村上さんとオクサマのパトリシアさんのブログ
・上毛町 タカハシタカシ.com|WEBデベロッパーのタカハシさんのブログ
【上毛町関連】
・こうげのシゴト|上毛町ブランド創造協議会の取り組み
・しげるんるんウェブログ~上三毛を歩く~|上毛町役場のキーマン森重さんのブログ
・feelingfine|こうげのシゴトスタッフの美声・久保山さんのブログ
・「田舎で働く」を体験!福岡県上毛町がクリエイターの短期滞在を支援中 | ihayato.news|この試みを知ることになったきっかけの著名ブロガーによるエントリー
【滞在中に遊びに来た人一覧】
・山崎ひかり(イラストレーター)
HP: http://pikari-bunny29.jimdo.com/
Twitter: @hikacha
・小室洋介(グラフィックデザイナー)
Blog: http://room427.net/
Twitter: @yosuke427
・松崎美和子(ライター)
Twitter: @elle_miwa
・高橋健太郎(Webデベロッパー)
Blog: http://foolish.hatenablog.com/
Twitter: @takochuu
・内田洋平(旅人)
Twitter: @yohei917