TRIP

「桜を見る」とかこつけて、なぜ石巻へ行ったのか。1つの偶然。 #石巻で桜 2日目

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SUCCESS!
「桜を見る!」という口実にかこつけて、石巻へ行ってきました!
東京から仙台経由で高速バスを乗り継ぎ、石巻へ。レポートは中継地・仙台の朝から始まります。

ちなみに、東京⇒仙台の移動篇はこちらから。

 

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高速バスの時間をチェックして、ホテル近くの朝市を見学。
中継地とは言え、せっかく仙台に来たのだから何か仙台らしいものを……と、おだんごをチェック。

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枝豆のペースト餡の「ずんだ」がのったおだんごをパクリ。

さて、いよいよ高速バスで石巻へ。

この高速バスはいわゆる「路線バス」で予約などはなし。
ただ、800円で石巻へ行けちゃうこの路線は人気で、出発時間の30分前には並んでいた方が無難。

1時間と少しバスに揺られて、あっという間に石巻の駅前に到着。

石巻は至る所に「石ノ森章太郎」の痕跡が。

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駅の隣にある「観光物産情報センター」で地図をもらう。
とりあえず栄えてる方へ行ってみるかと、アーケード街「立町大通り商店街」に向う。

すると、すぐに目に入ってきたのは「石巻立町復興ふれあい商店街」

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元駐車場とおぼしき場所にコンテナがいくつも立ち並び、お土産・乾物の販売からパンなんかも売っている。

一番奥の電気屋さんではレンタサイクルもあり、無料で自転車が借りられるとのこと。

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その隣には、なんだかおしゃれなストリート・カジュアルファッションの「Rasders」が。

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ワーク・ストリートの国内外のメンズアイテムを取扱っているセレクトショップだった。
内装もおしゃれ。
その片隅にこんなコーナーがあった。

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石巻・女川・会津若松のブランドが「石巻ユナイテッド」というプロジェクトを立ち上げ、Yahoo!ショッピングで販売しているそうだ。

そこからいくつかのアイテムがピックアプして置かれていた。

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石巻は若者がたくさんいた。
駅前を出歩いているのは若い人が多いってだけの話かもしれない。
だけど、勝手に田舎だと思っていて、申し訳ないと思った。

感じの良い店員さんにあいさつをして、店を後にする。

さて、どうしよう。
桜を見に来たのに、まだ一本も見てないぞ。

フラフラと商店街を進むと、魅力的な横道を見つけた。
……この、尋常じゃない階段。
きっと寺か神社があるに違いない。

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ビンゴ!

神社仏閣には桜がだいたいあるものだ。
「桜前線を追いかけて、石巻へ」といって、一本も見つからないんじゃ話にならないし、まずは押さえを桜をと、急な階段を登る。

ここは「羽黒山」

ゼイハー息を切らし階段を登りきると見事な桜があった。

http://distilleryimage9.s3.amazonaws.com/32e93a5ea96811e2a22022000a1fc78f_7.jpg

良かったー、ひとまず「第一村人」ならぬ「第一桜」発見。

山の上から対岸の風景を見下ろす。

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(たくさんの住宅街。やっぱり「街」だなー)

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「3日間の滞在をお見守りください」とお願いする。

もう一度、桜の写真でも撮ろうかな、と思ったら向かいから作業服を着た男性がやってきた。

初めて会うけれど、前から知っている。
その人はクロサワさんだった。

冒頭に『「桜を見る!」という口実にかこつけて、』と書いた通り、
本当に桜が見たいだけなら、石巻である必要はなかった。
実家のある新潟にでも行けば良い。

被災地である石巻へ来るきっかけになったことが2つあった。

1つは驚きの偶然である。

私がTwitterをはじめたのは2009年の7月。
最初はアカウントだけとって放置していたのだけれど、2010年の秋頃からちゃんと使うようになった。

その頃、私は下北沢にお店を出すことになって、それが発端でなんだかんだあって、
「嘆いていても何も改善しないから頑張るしかない」と自分を奮い立たせていた。

そんな私に共感し、同じ「小さなお店」を開いて奮闘していると、Twitterを介してやり取りしてる方がいた。

面識や素性は全く分らず、Twitter上でよく行われているように、「@」を飛ばしてコメント頂いて、お返事したりしていた。
頻繁にやりとりをしていたわけではないけれど、
その頃にいただいた励ましの言葉は、本当に嬉しくて、
ずいぶん支えになったので、アイコンをよく覚えてた。

それから冬が来て、春が来るかという時になっても、相変わらず私の苦境は続いてた。
自暴自棄なって、『こんな状況がうやむやになるような天変地異でも起これ!』って思ってた。

そして、3月11日が来た。

天変地異が起きた。

テレビに映る尋常じゃない様子に酷いショックを受けた。

天変地異を願った自分にも、自分のことで手一杯な自分にもショックだった。

物資を募って送ってみたり、義援金を集めてみたり、
出来そうなことはやってみたけれど、あまりにささやかすぎると分っていた。
そんな間接的な支援なんかじゃなくて、必要なのは人の手だと思った。
実際に行って、泥を掻き、声を掛け、汗をかくことが必要だと思った。
自分の大変さなんてぬるいと思いながらも、赴く余裕さえない自分が後ろめたくてしかたなかった。
(その葛藤を順行化しようとした記事がこれ「東京で元気にしている私が、元気でいるために考えたこと『自分なりの「がんばり」を許す』」)

それからしばらくした頃に、Twitterで現地の写真とおぼしき画像が流れてきた。
しかも、やりとりをした見覚えのあるアイコンの方から。

あれ? もしかして、と思って、その方のツイートを遡って見た。

被災してる。

津波の写真もある。
「小さなお店」が痕跡もなくなくなっている。

「小さなお店」は水回りのショールームだった。
それが、何もなくなった。

恐る恐るダイレクトメッセージをしたのを覚えてる。
彼が生きていることは分る。だけど、何が起こったのか分らない。
聞いてはいけないことかもしれない。
けれど、見て見ぬふりはできない。

彼はとっても明るかった。
前向きだった。
私と同じで、「頑張るしかないから、自分を奮い立たせている」だけなのかもしれないけれど、
私よりもずっと苦境の中で、タフに前進していた。

そのやり取りの中で、初めて彼の名前が「クロサワ」であることを知った。

クロサワさんは凄かった。

お店が流されてしまった跡地に「がんばろう! 石巻」という大きな看板を建てた。

そこはあっという間に復興のシンボルとなって、ニュースで見かけることも一度や二度でなかった。

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↑訪れた人のメッセージが残されているノートにはカールルイスから「ネバーギブアップ」の文字も。「06」と書いてあるノートに記されてます。

驚いたのが、いまもこれは有志で行われているということ。
許可は取っているそうだが行政の働きではなくて、
クロサワさんや友人らの有志で指向を凝らしこの「頑張ろう!石巻」は運営されている。

ここは最高水位6.9mの津波が襲ったそうだ。(青い看板の高さ)

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↑現在の「がんばろう!石巻」から「文化センター」を眺めたところ。上の地図で言う煙の部分。何もない。

「幸い、僕は家族や従業員は助かった。だけど近所の方や取引先の方にはなくなられた方も居て……」

「震災当時、僕が持っているものはケータイだけでした」

「家も、車も、店も流されて、ケータイしか持ってない」

「みんな探しながら歩いているんですよ。
がれきを見て、探し物をしてるんです。
行方不明の家族がいないかとか、探してるんです。
僕も気がつくと下を向いてる。気分が塞いでしまう。
その中で、少しでも何かできないかと思ったんです」

「店があった土地があるから、
ここに看板を建てられないか友達に相談したんです。
この木材も全部ガレキなんですよ。
流されてきた板を再利用して看板を建てました」

「この看板は僕一人が作ったものではなくて、
たくさんの友達の協力があって、みんなで建てたものなんです」

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最初は看板だけだったそうだが、献花が集まるようになったので献花台を設置して、
説明を求められるのでモニュメントを設置、と日々進化している。

この灯火は地域の木片を火種に、「頑張ろう」という気持ちを絶やさぬため燃やし続けているそうだ。

復興のシンボルとなったこの場所は、地域の人に「がんばろう看板」と呼ばれている。

その看板の向かいには「とまりの駅」と書かれた看板と白いテントがあります。

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もともと門脇小学校の向かいにあった「とおやま商店」さん。

門脇小学校は津波で被災し、流された自動車がぶつかって炎上し、学校も全焼。
現在も静かにたたずんでいる。

「(門脇小学校には)今もカメラを向ける気になれない」とクロサワさんは言っていた。

私も「そうですね」と答えた。

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店頭では様々な石巻の逸品が販売されている。
私はこのとろろ昆布を買うと、おまけだといっておせんべいを一袋もらってしまった。

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おばちゃん達が手作りしている、この梅の木で出来たお箸も購入。
するとマドラーと爪楊枝までいただてしまった。

「クロサワさんにはお世話になってるから~、サービスしなくちゃ」とおばさまたち。

とにかく、明るく、よく笑う。

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私がここで、急に神妙になって辛気くささを漂わせるなんて、逆に失礼極まりないなと思った。

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クロサワさんは仕事中に被災したそうだ。
社用車の軽バンに乗って、後ろから津波に追いかけられながら逃げた。
途中で走って逃げている人を発見し、ドアを開けてその人を掴み、車に乗せた。
そんな腕力なんてないはずなのに、自然と身体が動いた。
しかし、行く先にも津波が見え、このままでは行けないと近くの松の木によじ上ったと言う。
そして、水が引けるまで木の上で一晩過ごした。

「必死だったよ。寒かった。車に乗せた男の人も、近くの木によじ上ったのが見えた。
流される人も見たし、車のハンドルを握ったまま流される人も見た。
だけどその時はそれしか思わない。
“あー、あの人流されてる!”それ以上のことは考えなかった。
考えられなかった」

「水が引くまで一晩かかった。
次の日の朝になって、ようやく水が引いて、街の様子が分かった。
実は、この看板が立っていた場所は店舗兼自宅だったんだけど、
震災の翌日にはまだ水が引いてなくて、近づけなかった。
だけど、何もないってことは分った」

「あの2日間は寝てなかった。寝てられなかった」

「嫁さんと再会できたのは、石巻高校の避難所。
無事で良かった。
ユウさんと会った黒羽山の階段を、街中を脱出する時に通りかかったんです。
ビックリした。
犬の散歩をしてる人が居るんですよ。
僕はもう、日本中が津波に巻き込まれ大惨事になってるものかと思っていたんです。
けど、違った。
津波が襲ってきていない地域は、電気が通っていなくても、家が残ってる。
家が残っていて、犬が居れば、散歩はしなくちゃいけなくて、混乱した。
あの時が一番ショックだったなぁ」

津波が来た場所、来てない場所。
それは本当にくっきりと、線を引いたように違う世界だったそうだ。

いや、それは、今も。

クロサワさんにランチへ連れて行ってもらった。
石巻といえば、なんと言っても海鮮だ。

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お店の名前は和食レストラン「天地旬鮮 ながる」(宮城県石巻市門脇字一番谷地41-3

観光客向けというより地域に向けて愛されているお店の様で、メニューは多種多様。
定食からつまみまでずらりと揃い、落ち着いた店内でちょっと良い時間を過ごせる。

しかし、やっぱり石巻初心者の私としては、こちらをいただいた。

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海鮮丼!

実はウニがちょっぴり苦手なんだけど、クロサワさんがウニを推すのでウニマグロ丼にしてみた。
そしてこれが驚き。
ウニ特有の生臭さなんて一切なく、舌に載せればなんのざらつきも残さず滑らかに早変わり。
その味わいは何度も裏ごしされた上質なムースのように軽い。

う、ウニって美味しいんだわ。

あまりの美味しさに頭を抱えて傾いていると、クロサワさんは満足そうに笑った。

その後、仕事があるクロサワさんは私を日和山公園まで送ってくださった。

クロサワさんは今、奥さまと仮設住宅で暮らしているそうだ。

「まずは仕事をどうにかしないといけないから、ムリして店を再建しました。
もう、相当ムリしてね。
コヤナギさんにも見て欲しいなぁ」

見たいです!

クロサワさんの仕事が終わったら、お店へお邪魔させてもらうことになった。

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