冬チェコ5日目の朝は「リトミシュル城ならコヤナギの隣で寝てるぜ」状態で起床。しかもここが元ブルワリーとかすごい宿だなぁと改めて思う。
旅もいよいよ終盤でちょっぴり淋しいけど、気にしない!
そこはお伽の国 リトミシュルのクリスマスマーケット
朝は早起きして街を探検! 夜の段階でもかなりかわいかったけど、明るくなったらもっとかわいいだろうと思って。予感は的中。スメタナ広場の家々はカラフルでかわいらしいし、アーケードは想像以上にしっかりしてるし、細長いスメタナ広場をぐるりと囲っていた。時間は7時30分頃だったけど、どこもお店はオープンが早く、普通にケータイショップとかもやっている。
週末だけ開催のクリスマスマーケット
街を探索して戻ってくると、聖十字架教会の前にマーケットが出現。そうか、これクリスマスマーケットだ! いままで見てきたクリスマスマーケットは、簡易的とはいえ小屋の中で毎日オープンしていたけれど、ここのクリスマスマーケットは週末だけ開かれるみたい。また、売っているものもとっても身近で安価なものや手作りのものが多く、観光客というより暮らしてる人向けな感じがした。「お邪魔している」感じが大好きなコヤナギは、ここでたくさんのお土産を買い込んだよ。
秘密の会談、リトミシュル城
13世紀からあったリトミシュル城だけれど、現在の姿になったのは15世紀にペルンシュテイン家が領主になってから。スペインから嫁いできたお后様のために、スペイン人の建築家2名を雇い14年かけて宮殿を増築。上階にアーケードのある中庭を設け、壁一面にスグラフィット装飾を施した。8000枚といわれる搔き絵のタイルは1つとして同じものがなく、自然や暮らしに即したモチーフが多いが、よく見ると天使や宇宙人の姿も?
使用人の部屋がいちばん落ち着く
リトミシュルはボヘミアとモラヴィアの交易路上にあり、プラハでは行えない“ちょっと込み入った会談”にこのリトミシュル城が使われていたという。
地下のギャラリー
リトミシュル城のスグラフィット装飾は改修されたもので、現在も活躍中の芸術家オルブラム・ゾウベク氏によるもの。御年90歳で現役なほか、とっても女好きでそっちも現役という噂。そんな彼の作品がお城の下にはびっしり。中でも愛されていたチェコの初代大統領が2011年になくなったとき、彼の死を悼んで灯されたろうそくを集めたハートの彫刻は、中に入って写真を撮ることも出来る。他にも、我々が訪れたときはクリスマスシーズンだったのでボヘミアングラスのオーナメントへの絵付け体験ワークショップもやっていたよ。
スメタナの生家
「なつかしき河よ、モルダウの〜(岩河三郎さん作詞にしてみた)」でおなじみの合唱曲「モルダウ」が、連作交響詩「わが祖国」の第2曲だってことは、コヤナギのしつこい雑学入りブログを読んでいるみんなならもう知ってるよね! そんなスメタナの実家は結構裕福で、実はお城付きのブルワリー……そう、わたしが泊まったあのブルワリーの醸造者がスメタナのお父さん。そんなわけで、スメタナが生まれた家が見れます。スメタナにも、赤子だったときがあるのだ。
鬼才の画家の丸ごとアート ポルトモネウム
外観はなんてことない民家。玄関くぐってもまだ民家。でも奥の部屋に入ると一変狂気の世界! グラフィック画家で作家の「ヨゼフ・ヴァーハル」という人の作品を集めた私設美術館で、ガイドブックには「圧巻」とか「神秘的」とか書いてあるけど、いやこれは狂気でしょ、いい意味で! 回顧展などがひられるほど、チェコでは有名な画家さんらしい。うん確かに凄い。
チェコ・リトミシュルにある、鬼才の画家の丸ごとアート ポルトモネウム – Spherical Image – RICOH THETA
名前はスメタナだが聞いてるのはヘヴィメタな
マイクロブルワリー VESELKA
マイクロブルワリー VESELKA
まずは小さなレストランに通されて、ビールを一杯。赤いギンガムチェックのテーブルクロスが印象的な、リトミシュルっぽいかわいいお店で、グラスをよく見ると……そこにはスメタナの顔が! よく見るとビールサーバーにもスメタナが! しかもここで作っているとのこと。流行の「マイクロブルワリー」ってやつですね。
早速ブルワリー見学。こぢんまりとしたかわいい扉を開けるとまず聞こえて来たのはヘヴィメタル! しかも凄いパンチのあるおじさま。ここではラガービールもエールビールも作っているそう。スメタナの顔をしてAC/DCで育ったビール、かっこよすぎるでしょ。
やってきましたオロモウツ! 都会的なホテルNH Hotel 4
リトミシュルを出発してバスで2時間弱。プラハに次いで文化財を保有しているという街オロモウツ。ついつい「泣きながら笑ってる人」みたいなことを想像してしまうけれど、かつてはモラヴィア地方でもっとも栄え、三十年戦争の後期にスウェーデン軍に占領され大きな被害を受けたとか。その復旧には100年以上の年月がかかったそうだよ。
そんな歴史的背景を持つオロモウツでの宿泊先は……なんと近代的なビジネスホテル! かっこいい駅舎ちかくの近代的な建物で、いままで石造りのバロック建築ばかり見てきたから逆に珍しい。
オークルナットのフローリングと黒いバスルームに差し色は赤、とどこまでも都会的。ルームコーヒーにエスプレッソがあり、有料だけどナッツやドライフルーツまであり、アメニティも充実。コヤナギは初めて、バスルームにトレイとウォッシュレットの2つの便器が置いてあるのを見た。使わなかったけど。
「伝統的なモラヴィア料理」がいただける
モラヴスカー Moravská restaurace
モラヴスカー Moravská restaurace
ランチにやって来たのは深い木製のインテリアとクリスマスのデコレーションが華やかで重厚な面持ちまで感じさせるレストラン・モラヴスカー。伝統的なモラヴィア料理が楽しめるとのことだけど、残念ながらコヤナギはここまでにチェコ料理のボヘミアとモラヴィアの違いを感じ取れるほど舌が育てられなかった。観光局の方に質問してみると、モラヴィア料理はスロヴァキア料理やオーストリア料理に近いといわれているけれど、チェコ人の中でも大きな違いを認識していないそうだ。
「強いていうならやはりボヘミア地方ではビールが多く作られているので、ビールによくあう料理、モラヴィア地方ではワインに合う料理が多い、という感じでしょうか」とのこと。「このお店のグラーシュは1966年のファミリーレシピに基づいて作られているんですよ」へー! せっかく大勢出来てるから、訪れたすべてのお店のグラーシュの写真を撮って食べ比べしてみればよかったなぁ。しかしすでに旅は終盤、次の機会だ。
おそろいのエプロンを首に巻いてスープを頼むと大げさな黒こしょうがやって来て、ポークソーセージの煮込みについてきたタマネギがいいスパイスになっている。飲み物はホットサングリアをオーダーしてお砂糖をたっぷりと投入。少しはチェコ舌になったかな。
地元大学生の日本語ガイドと一緒にオロモウツ歩き
オロモウツの大学には日本語学科があるという。そのため、日本への留学経験があったり、日本語が話せるチェコ人大学生が結構いるそうだ。そんなわけで、オロモウツ・ガイドのシュテファン・ブラホさんと、日本語が「少し話せる」という大学生ガイド、アネタちゃん&クバくんに案内してもらった。「少し話せる」なんていうものの、そんなのは謙遜で「いえいえいえ、そんな、僕なんてまだ全然日本語話せてないですよ」なんて完璧に日本語で謙遜するし、君より語彙数少ない日本人は、いっぱいいるぞ。
ホルニー広場では当然のようにクリスマスマーケット開催中。とっても賑わっている中、有名な師掛け時計を見上げ、市庁舎の……中へ! 暮れゆく夕陽の中から広場のツリーを見下ろし写真を撮るというこの上ない、幸せ……。
日が暮れてからみんなでクリスマスマーケットのアイススケートを滑ってみた。ニューヨークでもあこがれつつ、出来なかった街中のアイススケート。人はたくさんいるし、氷の状態もでっこぼこだけど、キラキラの小さな電球に包まれて、真っ白な氷の上をツーッと滑るのは、なんというかとっても、楽しかった。
チェコ・オロモウツの市庁舎から見下ろすホルニー広場 – Spherical Image – RICOH THETA
聖三位一体柱
2000年に登録されたユネスコ世界遺産。ペスト終焉を記念して1716年から38年の歳月をかけて建築されたバロック様式。
クリスマスマーケットとオロモウツひとりブラリ
夕飯の時間まで自由時間。マーケットの中をぷらぷらして写真を撮る。いままでで1番ゆっくりできてる。おいしい香りの誘惑に負けそうになるけど、いかんいかん。夕飯までにお腹を空かせないと。食べることだって取材なのだ。
足は自然と人気のない方へ。そこはローカルの香りがする、日常の風景だった。日が暮れて、みんな家に帰る。ひとりもんは暖と賑わいを求めてホスポダへ流れ込む。
わたしはしばらく目的もなく歩いていたけれど、せっかくだからどこか目指そうと思い立ち、Googleマップを立ち上げて、なんだか「凄そう」な場所を求めぶらりと歩く。
聖ヴァーツラフ大聖堂
到着したのは聖ヴァーツラフ大聖堂。プルゼーニュの聖バルトロミェイ大聖堂がチェコで1番背が高い尖塔を持っているって書いたけど、2番目はここ聖ヴァーツラフ大聖堂。それはフロントの2本ではなく、奥にある尖塔で、高さは約100m。運良く中にも入れたけれど、さすがに地下聖堂は閉まっていた。
オロモウツの居酒屋ディナーHanácká hospoda Olomouc
「ホスポダ」とはビールがおいしいチェコの居酒屋のこと。おいしいビールとそれにあう気の利いたおつまみが必ずおいてある。今日はオロモウツで予約必須な人気のホスポダへやってきた。賑々しい店内ではいかにも「ビールラブ!」な恰幅のいいおじさまたちが大きな肩をお行儀よく並べて、平熱の毎日を謳歌している。小さなお皿(といっても日本で見たらふつうのディッシュ皿だと思う)におつまみが、大きな木のお皿にはパンとレバーパテやザワークラウト、ピクルス、チーズなどちょっとしたおつまみが載っている。ここでもチーズのフライやポテトをつぶしたお焼き、肝の煮込みなどをいただいて、わたしのおなかも常連のおじさまたちのようにパンパンになった。
帰り道は満腹で、ほろ酔いで、みんなでがやがや歩きながら帰った。
最近はお天気に恵まれて、あの「頼りない太陽」が嘘のようだった。寒さもだいぶ和らいで、酔って歩いているせいもあるけれど、夜なのにこんなに過ごしやすい。ちょうどそんな話をしていた頃、視界がもくもくと霞んできた。コンタクトレンズが乾燥して曇ったかな、と思ったけれど、そうじゃない。
霧が出現したんだ。10メートル先さえ視界が怪しい濃霧にはしゃぐと、だれかが「ヨーロッパっぽいね」と教えてくれた。どうやら「頼りない太陽」と同じくらい、冬の暖かい夜は「濃霧」がつきものなんだそうだ。ここでは当たり前のことに、はしゃぐわたし。暮らしてないからこそ味わえる感動に浸りながら、両手を横に広げてぶーんと濃霧に突入した。
Special Thanks:チェコ共和国観光局、Linkトラベラーズ