ESSAY, TRIP

DAY4:プラハの「世界でもっとも美しい図書館」をかすめて、
おとぎの街リトミシュルへ行こう!

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SUCCESS!
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冬チェコ4日目の朝はプラハでお目覚めしたコヤナギユウだよ!

3日目の記事でさまざまな異名を紹介した文化都市プラハ。
複雑な歴史が示すとおり、文化、特に芸術をとても大切にしている。

ここに貼ったのは映画「サウンド・オブ・ミュージック」の一幕(のカバー)。とっても大好きなシーンで、大事なお客様を子ども達と主人公の家庭教師が人形劇でおもてなししているところだよ。みんなで役割分担して、小さな5才の女の子グレーテルもプリンセス登場をお手伝いしたりしてかわいらしい。
映画の舞台はオーストリアだけれど、ヨーロッパではこんな風に家庭に小さな劇場を持っていたり、地方を回る旅劇団などがいたりして、人形劇(マリオネット)がとても身近だったんだって。時代的に、なかなか他に娯楽がなかっただろうしね。

特にチェコにとって「マリオネット」は特別なんだって。
それは、チェコ語を守ったから。ハプスブルク家の支配下だった時代はドイツ語を話さなければならなかったけれど、人形劇(マリオネット)だけは、チェコ語で上演してもよかったんだ。マリオネットがなければチェコ語は消滅していたかも知れないんだよ。
国の文化とアイデンティティを守ったマリオネットは、チェコ人にとって特別なのだ。

失敗知らずのマリオネット作り、国立マリオネット劇場

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そんなわけで最初にやって来たのは国立マリオネット劇場! 「国立」なんていうけれど、劇場はとってもこじんまりとしている。1番有名な演目「ドン・ジョヴァンニ」の観劇もいいけれど、せっかくだからお土産を作ってみよう。おみやげとは、そう、マリオネット!

いくつかのパーツをくっつけて、糸で結んではい完成。どんなに不器用で集中力がなくても、あっさり完成するのでご心配なく! (コヤナギはちょっと物足りなかったけどね。

「世界でもっとも美しい図書館」を求めてストラホフ修道院

天井がフレスコ画で覆われた「神学の間」

チェコ滞在中、Instagramで「チェコ」や「プラハ」のタグをチェックしていると、やたら出てくる画像があった。検索してみると「世界でもっとも美しい図書館」とのこと。場所はプラハ城に付属したストラホフ修道院所有の図書館で、撮影には入館料とは別に撮影費が必要。確かに美しいけれど、中には入れないので、立ち入ることが許される立場で来てみたいと強く願ったよ。

ストラホフ修道院の哲学の間 – Spherical Image – RICOH THETA


在住フォトグラファーオススメのおもちゃ屋さんへ

なんとこちらプラハの地下鉄
これは地下鉄のホーム

チェコ行きが決まったとき、最初に思い浮かんだはおもちゃだったんだ。というのも、消しゴム手作りハンコを作っている20年来の友だちの「一生に一度訪れてみたい国」がチェコで、チェコの素晴らしさを力説されたことがある。なかでも雑貨好きの彼女はチェコのおもちゃに魅了されており、彼女より先にチェコへ行くことが決まったとき、おもちゃを買って帰らねばと強く心に決めていた。

でもどこへ行っていいか分からない。適当にプラッと入ればいいかと思っていたけれど、想像以上に街が広く、またどもお店も店頭のディスプレイが控えめなので、ともするとなに屋さんか分からない。ここで役立ったのが書籍「愛しのプラハへ」だ。チェコ在住10年以上になる女性写真家の著者がプラハの観光名所からオシャレなカフェ、古本屋から近隣の街まで紹介してくれる。暮らしている人目線から見ても魅力的なプラハ・チェコが楽しめる一冊だ。渡航前にも帰ってきてからも楽しめる。この本を、一緒に行ったLinkトラベラーズ編集長ののりおさんも買っていて、そこで見つけたおもちゃ屋さん「フラチェコテーカ(Hračkotéka)」へ愛娘のお土産を買いに行く、というのでついて行った。丸みを帯びた優しい色合いのおもちゃが満載で、チェコで1番散財。障がい者の職業訓練場所にもなっていて、それもとってもほっこりしたよ。

そうそう、著者の横山さんはチェコ雑貨のウェブショップ「アンティーク・チェコ雑貨のお店 バボーフカ(bábovka)」もやっていて、ここもチェコの魅力があふれているから見てみるといいかも! わたし、この本の著者さんだとは知らずにブログを拝見しいて、いま同一人物だと知って驚いているところだよ。

モルダウ川に浮かぶボートレストラン「Marina Ristorante」

店内、というか船内!

食後は次の街へ移動なので、プラハ最後の食事となるランチはなんとモルダウ川の上で! このレストラン、店舗全体が大きなボート。モダンな内装で、船である間隔は全然ないのだけれど、河の上を定期船が走って大きな波を立てるとわずかに店が揺れるから「船なのか」と実感する。なによりモルダウ川ごしの眺めが美しい。
食事はオシャレなイタリアン。どれも見た目にもおいしく、プラハを名残惜しむのにぴったりだった。

古都リトミシュルの元ブルワリーなホテル
しかもキャッスルフロントなCastle Brewery Litomyšl

わたしが泊まったCastle Brewery Litomyšlはその名の通りもとブルワリー!

プラハからバスで3時間移動してやって来たのは、「小さくてかわいい街」と噂の「リトミシュル(Litomyšl)」。ついたときはもう真っ暗で、またもや様子は分からないけれどとりあえずホテルにチェックイン。エントランスからして、なにか雰囲気が違うけれど部屋に入ってみてビックリ。窓から、世界遺産のお城が丸見えですけど? 「見える」ってもんじゃない、隣なの、真向かいなの。驚くのはそれだけじゃない。しかもこの部屋、もともとこのお城のブルワリーだったとのこと。そんな部屋に泊まれるの光栄すぎでしょ。部屋は広いけれど設備がしっかりしているので寒さを感じるようなことは一切なく、水回りも最新鋭。外国の(チェコも外国だけど)オシャレなSOHOオフィスって出で立ち。いいなぁ、ここに暮らしたいよ。

この建物の中にはもう1つ宿泊施設「Litomyšl Chateau Apartments」が入っていて、こちらもアンティーク&モダンでかっこいい。なによりゴージャスでいっぱい写真を撮ってしまった。

カトリックもプロテスタントも関係なし!
アートな市民教会、聖十字架発見教会

クリスマス時期だったのでツリーが出ている

リトミシュルについて最初に案内してもらったは、このお城や街の歴史を展示したミュージアム、それに教会。

リトミシュルのミュージアム

ここで撮影するとライティングもバッチリだった

リトミシュル城やこの町の変貌が分かる模型をかつての城門跡遺跡の隣で聞くことが出来るので迫力満点。今まさに立っている、そして今夜泊まる宿がいつ頃出来たのかなどもよく分かる。13世紀から城主を変え、変貌を遂げてきたお城なのだ。また、当時の市民によって信仰が守られたことが分かる、市民によるグラス絵は画家が作ったものとはひと味違い、けっして上手ではないけれど力がある。また、リトミシュル城がおよ現在の形になった17世紀の人々の服装にコスプレして写真漏れたりするので、ネタにやっておきたいところだ。

聖十字架発見教会

つい何度も

そしていよいよ教会へ! こちら、長く閉鎖されていたものを専門家が集結して改装し2013年に公開したばかり。今まで見てきた教会と比べるととても小さな教会だけど、注目したいのが内装。実は、内部はほとんど木製で、ペイントで大理石風を演出してるんですって。わたしたちが訪れたときは、教会の中でアート展示を行っていた。

なんて開かれた教会なのだと驚いたけれど、驚くのはそれだけじゃない。「市民教会で信者が少ないからカトリックもプロテスタントも一緒に使っている」とのこと。まじ!? だってプルゼーニュのシナゴーグなんてヨーロッパ一大きいのに信者が3人しかいないんだよ? 平和の形がある気がしたなぁ。

チェコ、リトミシュルの聖十字架発見教会 #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA

ほっこりホテルのほっこりディナー ズラダー・フヴェズダ Hotel Zlatá Hvězda

お芋がおいしいよチェコ

チェコ語で「金色」を意味するのホテルのレストランでディナー! かわいい街に溶け込んだほっこりとした店内で、とっても明るい印象。(チェコの飲食店は暗いものかと思っていた)大きなテーブルをみんなで囲み、チェコ伝統の田舎料理をいただく。チェコは「ボヘミア」と「モラヴィア」の2つに大きく分けられると書いたけれど、ここリトミシュルはちょうどその境目に位置するんだって。だからお料理にも少し変化が。心なしか、どれもほっこりと身体だけでなく心まであたたかくなるような気がする。

夜のリトミシュル、スメタナ広場

スメタナ広場

ご飯を食べ終わって、いい気持ちで夜道を帰った。少し雨が降って、石畳が艶めいている。建物が低くて、開放感のある空が久しぶりだなぁと思った。大きなクリスマスツリーを見上げ、素朴な時計台を眺め、気ままにシャッターを切る。写真のできばえなんてどうでもいい。美しいなぁという気持ちで一杯になって、部屋にもどって、気持ちよく眠りについた。

エッセイ:コヤナギとカメラ

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ずっと写真が好きだ。

でも、その内訳は、だいぶ変化があった。

初任給で買ったのはオリンパスのコンパクトカメラだった。もちろんまだネガフィルムだ。これはこだわりがあったわけではなく、カメラといえばネガフィルムという時代だっただけ。いま、「写るんです」がリバイバルしてるけれど、わたしが高校生の時はオリジナルで流行っていて、毎日少しずつ摩耗していく「女子高生」というブランドをひねくれた形で残していた。当時は「自撮り」といった文化はあまりなく、主に友だちを撮っていた。ふつうの「写るんです」なのに白黒で現像したりして、とはいえLomoを買ったりするようなことは考えなかった。初任給でカメラを買ったのも、たくさん撮るので節約の意味合いもある。あと、Lomoみたいな現実離れしたアート作品が撮りたいんじゃなくて、いま目の前にある「摩耗していく時間」をそのまま「採取」したかったから。

やがてデジカメが登場し、友だちとインディーズファッションブランドを立ち上げて、作品の撮影をするようになっても、カメラへの「好き」さは変わらなかった。わたしみたいなもんでも、ほんの数万円それっぽく撮れるのがありがたい、と考えていた。面白くて便利な道具だ。

取材で出かけるようになって、少し変化があった。思ったように撮れないのだ。『いま目の前にある「摩耗していく時間」をそのまま「採取」』したいのに、写らない。レンズを変えたり、広角用のカメラを持ったりして、カメラの機能でお手軽に解決していこうと思っていた。だって、わたしみたいなもんが、カメラマンの聖地に踏み込んではならない、わたしは分をわきまえているのだと線引きした。

転機はオーロラが「写ってしまったこと」だ。

カナダ観光局さんのお仕事でオーロラ取材に行った。このとき、わたしのカメラはミラーレス一眼。お仕事でいただいたものだ。いちおう一眼ではあったけれど、夜の撮影自体したことがなく、また、オーロラ撮影自体についても期待されていなかったので「撮れたらラッキー」くらいに考えていた。ちょうど「ツンドラ紅葉」といわれるツンドラ気候特有の低木層地により一面の紅葉シーズンに合わせていったので、季節の変わりということもあり、転機は不安定。人によっては「一生に一度の夢」と口走るオーロラとのご対面はなかなか叶うもんじゃないんだ。それをわたしみたいな、「写るんです」風情を歩んできた程度のカメラ好きが、そうそう対面できるもんじゃない、と得意の線引きに余念がなかった。だけど、オーロラはそういうもんじゃなかった。そこがオーロラ出現地で、晴れていれば、見られるのだ。オーロラに対面してしまった。全然「ちゃんと撮ろう」と思っていなかったから、高さ10センチくらいのおもちゃみたいな三脚を立てて、タイマーで撮影した。設定している間にもオーロラの様子はどんどん変わり、雲行きも怪しい。あっという間ので出来事だったけど、カメラには、オーロラが写っていた。

もちろんピントもなにもあったもんじゃない。「写った」というだけで「撮れた」というにはほど遠い。そりゃそうさ、こんな装備じゃ……と、持ち場の線の中へ戻ろうとしたとき、「撮れた撮れた」と喜んでいる人がもうひとりいた。テレビディレクターでロケハンで一緒にに来ていた方だ。彼女が持っていたのはコンデジである。「オートで撮ったけど、撮れるもんですね!」とおっしゃっていたので見せてもらった。撮れてる。めっちゃ綺麗に撮れてる。オーロラの裾の白いところまで、その裾の端っこの、ちょっとピンクっぽかったところまで、ちゃんと、写っている。

自分のカメラのオーロラ写真を見た。緑色のバスクリンみたいなマーブル模様だった。彼女はコンデジ、わたしはミラーレス一眼。これは、カメラのせいじゃない、わたしのせいなんだ、と思ったらショックだった。

その後、オーロラ撮影のスペシャリストに師事を仰いでオーロラを撮る機会にも恵まれた。基本的なカメラの扱い方を教えてもらって、撮りたいものが写るようになってきた。オーロラ、星空、ホタル。でも、本当はこんな色じゃない。星は赤から青まで七色にきらめくし、オーロラはもっと繊細だ。蛍の光は文字が読めそうなくらい、しんとした川辺で輝いている。全然撮れてないな、「採取」できてない。

いま目の前にある「摩耗していく時間」をそのまま「採取」したい。

「カメラが好き」の基本的な欲求が満たされていないことに気がついて、わたしは「身の程を知っています」という線の上に立っていた。

***

長くなりそうだから端的にまとめよう。そういえばここは冬チェコレポートの中だった。

そんなわけで、あれやこれやあって、いまは真剣に摩耗していく時間の採取に取り組んでいる。わたしが撮りたいのは、LomoやInstagramで映えるようなアート作品じゃない。わたしの目に映ったときの感動なんだ。稚拙な文章力を補うほどの、パンクみたいにシンプルな、がつんとくる一瞬を撮りたい。

だから、今回のチェコ旅の撮影はわたしなりに挑戦だった。しっかり三脚を構えてタイムラプスで全部抑えていくような星空撮影とは違う、めまぐるしく流れていく都会の取材で、どれだけ撮れるだろう、と。しかも印象と感動を封じ込める個性的なカメラはどれも譲れない。大きな斜めがけのサイクリストバッグには2.4㎏のフルサイズ一眼をしのばせて、荘厳な外装と内装を撮ろう。ミラーレスは大好きな単焦点レンズをセッティングして食べものを撮る。記録写真や表情で感動を伝える自撮りにはiPhoneが便利。感動する空間に立ったら360度カメラのthetaを掲げよう。そしてなにより、感動に集中しよう。映したいのは目に映ったときの感動だ、それを閉じ込めるんだ。

まだまだ全然出来てない。そもそもカメラの扱い方も分かってないし、視野も狭く、迷ってばかりいる。でも、チェコで撮ってきた写真たちを見ていて、さすがに全部とはいかないけれど、少しは「採取」出来たんじゃないかなと思っている。

いま、わたしのつま先は、あの線の外にある。

カメラが好きだ。

……だから、冬チェコレポートの中の写真も、クリックして拡大して見てみてね。

Special Thanks:チェコ共和国観光局、Linkトラベラーズ

“冬こそチェコへ行こう”リスト

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