2019年10月、ヨーロッパの端っこにあるポルトガルへ取材旅行に行ってきた。アシアナ航空が就航したばかりのソウル直通便で、リスボンに着いたのは夜。街並みが見えないままホテルに入ったのは、日本の家を出発してからドアトゥドアで24時間。上の写真は、朝、ホテルの部屋から見えた風景だ。色とりどりの建物、ぐるりと曲線を描く街並み、異国だ。思えば遠くに来たものだ。
本当は、このときの旅行記は大好きな媒体に寄稿する予定で4篇書き上げたのだけど、その矢先に世界を旅して回るのは、少しお預けという状態になって、わたしの原稿ももしかしたらもう日の目を見ないかもしれないなぁと思いながら、ぼんやりとした日々を過ごしていた。たぶん、静かなパニック状態なんだと思う。今もきっと。
宙ぶらりんになった原稿をどうしたらいいのかは、今もまだ分からないけれど、ポルトガルを旅した感動や情報を、少しずつ放出していこうと思う。今すぐは役に立たないかも知れないけれど。わたしも自分の文章を書くのが久しぶりすぎて、上手に書ける気はしないけれど。
「ポルトガル」を画像検索すると、カラフルな建物と青い空が印象的だけど、わたしたちが訪れた10月のポルトガルは雨が多かった。雲はどんよりとしていて、肌寒い。しっぽりとした雰囲気は、それはそれで旅情を誘い、ついつい「サウダーデ(哀愁)」について思いを巡らせる。
外国とはいえ、たいがいの都市部は似てくるものだけれど、リスボンは、いやポルトガルはずっと「異国」だ。街だけじゃない。エナジードリンクみたいに気軽に飲むワインも、コンビニ代わりのカフェも、コルク並木にはさまれた高速道路の風景も、何もかもが目新しく飽きることがない。でも、不思議と、何かなつかしい。
日本がポルトガルに触れたのは16世紀。大航海時代にやって来た南蛮船だ。そこから長い鎖国を経て、南蛮文化が日本に流れ込み、しみこんだ。パンやボタン、天ぷらにこんぺいとう。これらは全部ポルトガル由来だ。日本料理の代表のようになっている天ぷらまでポルトガルからやってきたものなんて……。
ここはきっと、文化の風上なのだ。
ポルトガルの首都リスボンから、少しずつ立ち寄った場所のことを、まとまらない気持ちのまま、お話しさせてもらえたらと思っている。
&TRAVEL寄稿記事
朝日新聞デジタルマガジン&[and]が展開する旅メディア「&TRAVEL(アンド・トラベル)」に、ポルトガル記事を4本寄稿できたので、良かったら合わせてご覧ください。