TRIP

東京から3200円の-16℃体験! 濡れた手ぬぐいがハリセンになる草津温泉一泊二日【前編】

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SUCCESS!
昨年末、別府温泉へ行ったとき「温泉街」の持つ独特の雰囲気に圧倒された。
タイムスリップしたかのような昭和感、不思議な香り、そして何より街中から立ち上る湯気。
それら全てが渾然一体となって、俗世から私を引き裂いた感じがした。別府には世界の11種類の温泉のうち、10種類が湧き出ていると言うことで、
徳島の「うどん県」に続き「おんせん県」を名乗ろうとしていた。そんな至極ぴったりと思われるネーミングにストップを掛ける地があるという。群馬である。群馬に誇るは四万、伊香保、そして草津の温泉街。私に感銘を与えた別府に、とんだ冷や水を与える草津温泉。
どんだけの「いい湯」なのか実証してきました!……無計画に。
ひとりで!20130226_3724242012年2月20日。
ちょうど仕事の谷場を迎え、最近ずーっと見っぱなしのiPhoneを家に置き去り(!)にし、
からだ一つ(と紙とペンとカメラ)を持ってやって来ました!温泉街への宿泊で助かるのは、荷物が少なくて済むところ。
パジャマや入浴用品は一通り揃っているので、持って行くのは下着と靴下と手ぬぐいくらい。

交通の便は新宿発草津温泉直行の高速バスを予約。
乗ったら最後、ボーッとしていれば温泉地の中心まで連れて行ってくれます。
しかも片道3200円! 早割なら2500円ですって。

新幹線で来ても、レンタカーでない限り結局バスでなければ来れない草津温泉。
少し時間に余裕を持って、バスで向かうのがオススメだ。

この日、草津温泉の最高気温はマイナス1度。

……誤字じゃないです。
「最高」気温がマイナス1度!
ここのところ毎日「この冬一番の冷え込み」を更新しているとか。
一番寒いのは日が明ける前の朝方らしい。

寒さ対策にイヤーマフ・インナーダウンそしてホッカイロを装備して、いざ草津温泉!

草津温泉はとってもコンパクトに出来ていて、冷えたらお風呂に入ればいいさ。

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高速バスの扉が開き、最初の一歩を踏み出すとすでに硫黄の香りがする。

バスターミナルから坂を下り、温泉地の中心であり、
「草津温泉街」のすり鉢の底である念願の湯畑を見る。

ほわあああああああああ。

思っていたより小さいけど……感動!

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↑寒さ伝わりますか?

凄く綺麗なエメラルドグリーン。
「温泉のもと」はこの色を再現しようとしたんだなぁ。
本物の方が、深みも変化もツヤもあって、綺麗です。

これに身体ごと浸れるというのだからそれだけでも感極まる。

興奮し過ぎてしまったので、ひとまず湯畑を見下ろす光泉寺へお参り。

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(右手は3月オープン予定の新入浴場建設中)

さっそく足湯でも……と思ったのだけど、激混みで入る余地なし。
ひとりならスルッと、間に割って入れそうだけど、ま、まだそこまでの鋼のハートになってないわ。
ま、まずはエネルギー補給。

どのガイドブックを見てもデカデカと載っているとんかつ屋さん「たけとも」へ。

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看板(?)メニューの舞茸とんかつ(1800円)をオーダー。

ん、んー……

すると、団体の若い男子が入店して来た。
どうやら旅行代理店の研修の様子。
舞茸とんかつを頼み、各々口に運ぶ。

男子A「これは……www」
男子B「強い、舞茸強すぎるwww」
男子C「舞茸表出過ぎwwwwwww」
男子D「ぶっちゃけ舞茸じゃまだね」
男子A「これ1800円ないわー」

えー、全同意です。

草津温泉は山岳地帯な上に、温泉のため土が酸性とのこと。
そのため、農作物がそだたず、食べ物の特産品はない。
……つまり「食事には期待するな」とどこかに書いてあった。

全くその通り。

せっかく温泉街に来たのだから、出来る限り身体も胃袋も贅沢させてやりたいと
奮発しくなるものだけど、この調子なら1000円を超える食費を出す必要はないなと思う。
勉強代です。

湯畑へ戻り、隣の公共足湯「湯けむり亭」へ。

今度は誰もいない。
しめしめ。

靴下を脱ぎ、荷物から手ぬぐい(必ずタオル類は持参する)を出し、草津温泉・ファーストコンタクト!

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あ、熱い! でも、寒い!

無数の極細虫ピンでキューっと刺されるような独特の痺れにひざを打つ。
熱い~~~~~。

「っくぅ~」

きもちええわ~!

足元は良い感じにボイルされ、すっかり色が代わったけれど、動かないでいた上半身が寒くて仕方ない。

少し早めにホテルへチェックインしよう。

温泉街の「ひとり旅」って実はなかなか難しい。
それはメンタル的な意味だけでなく、
「おひとりさまプラン」が全然ないのだ。

昔から宿場町として賑わう温泉街は、一人客によるアレが多いから、
あまり受け付けないんだって……アレは、ほら、じさつ……とかしちゃうらしくて……orz(嘘かホントか分りませんけど)

宿の予約はネットで探して見つけたんだけど、一人だし、贅沢してもしかたないし、
朝晩のご飯がついて一万円以内の宿を……と思ったら1件しかヒットしなかった。

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「新潟屋旅館」

私、新潟出身ですけど偶然です。もちろん、県民以外も泊まれます。
(このお宿は3代目で初代が新潟出身だったらしい。当時出身地を店名にする宿が多かったそうだ)

お部屋はこぢんまりとした6畳和室。
共同温泉・トイレ。

共同温泉は広くはないけれど、この日は24時間自由に入って貸切OKだった。

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お部屋の様子。
コタツ最高。満足満足。

おかみさんと少しお話をして、目的の温泉を目指すためすぐに外出。

「今はマイナス4度ですよ」とおかみさん。

うちの冷凍庫と同じ温度だ。

「昼間は日が照ってて温かかったけれど、雪がちらついてきましたね。
こういう日は吹雪くことがあるから、気をつけてくださいね」

確かに気温は寒いけれど、日に当たっていればぽかぽかするいい陽気。
「吹雪」なんて連想出来ないくらい、いいお天気だった。

草津の温泉街はホントに小さい。
だからちょっとくらい道に迷っても全然平気。

おまけに道路にはこんな風に目印が書いてある。

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(地蔵の湯は公共浴場)

初めての草津体験(足湯を除く)をするならココ、と決めていたのは「西の河原露天風呂」

とにかく広いらしく、温度が熱めな草津温泉も、場所によってぬるいから自分で温度調節が出来るとのこと。

うん、初めてにピッタリだと思う。

趣のある西の川原通を歩く。

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5分ほど歩き、突き当たりまで行って、ちょっと曲がって見えて来たのはこちら、
「西の河原公園」!

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分りますか?
池から立ち上る湯気が!

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湧き上がってますよ、温泉が!

隣には温泉の川……

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凄く寒いけど、川の近くはあったかいんですよ。
温泉だから。
溢れ出しまくり。

そんな川の上流に私の目的地はありました。

到着~!

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入口で500円払い、貴重品はロッカーへ。
店員さんに

「お湯が強すぎるから、10分くらい浸かったら上がって、また入ってってやってよ。湯アタリしちゃうから」

はーい!

さて、いよいよ全身草津温泉体験。

浴場の写真は撮れないので、イラストで。

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脱衣所の扉を開けると、立ったままで使えるかぶり湯があるだけで、洗い場はなし。

そこには小体育館、50畳以上の露天風呂が。

周りの山々は雪景色。

頬にはチラリハラリと粉雪が。

う、う、うわーん! 最高すぎる!

ここ、西の河原露天風呂のお湯は酸性。
草津のお湯は酸性が強く、5寸釘もたった9日で針金の細さになってしまうほど!

西の河原露天風呂のお湯は、加水して薄めているんだけどそれでも強いとか。
お湯の白濁は一切なく、透き通ったエメラルドグリーン。
確かに奥の源泉近くは熱めだけど、外が寒すぎてのぼせる気配なし。

……そう思ったのに。

アレ?
なんか、カーッとする、気がする。

そう思ったらさっと岩の上に腰掛けて、でも寒い。
またちゃぷんとお湯に入って。
岩の上、お湯の中を繰り返す。

どんどん雪が強くなる。

ひたひたひたひたーっと降り注ぐ雪が気持ち良くて、美しくて。

テンションが上がり過ぎたのが、胸の鼓動が収まらないので上がることに。
湯アタリしては困るのだ。

着替えて外へ出ると、一層強さを増す雪。

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これだけ写真に映り込んでしまうほどの大雪。
さらっさらのスノーパウダー。

肩に積もっても払えば落ちる雪質。

そうそう、雪はこうでなくちゃ。

雪が余計に、嬉しくて、楽しくなる。

江戸時代から人気があり「草津千軒江戸構え」と呼ばれたほど賑わった草津温泉。
その草津温泉を日本のみならず世界に知らしめた人物がいる。

それがドイツのベルツ博士。
ベルツ博士は内科・婦人科を教える東京医学校(現・東大医学部)で26年間教鞭を奮った人物。
世界に「世界第1級の温泉保養地(リゾート)」として紹介したため、一躍草津は世界的に有名に。(確かに外国人観光客が多い)
「草津の恩人」などと呼ばれています。

そんなベルツ博士を見つけました!

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「寒いっす」

西の河原通りに戻り、お目当てのアイツを探します。
あった!

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なぜか「草津ガラス蔵2号館」という、ガラス細工のお土産物屋さん前にある温泉卵。
もちろん、いただけますよ~!

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(さっさと食べないと凍りそうでした。まじで)

続いて何となく足を止めたのがこちら。
店頭のおじさんが、なんかいい感じで。

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夜は居酒屋営業もしているという「山マタギと海番屋」にて、鳥串をいただく。

「マタギ」の主な獲物は熊らしく、それは熊はお金になるからだそうだ。
その昔、熊の胃は漢方になると言うことで、金と同じ値段で取引されていたとか。

「だから熊の胃だけで一頭40万だろう? こんな冬の時期に巣穴で寝てる熊を撃って、印だけ付けてどんどん猟るのよ。あとでそりでまとめて取れば、お金になっちゃう。マタギって職業が続いたのは、お金になるから」と言っていた。ナルホド。

雪はいよいよ強さを増し、一旦宿へ戻ることに。

でも、宿に戻ったって、コタツ入ってポツーンとしてるのもなぁ……。

そう思っていたところに見つけた、「TEA ROOM Yuki Usagi」

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雪を払って店内に入ると、ふんわりと小麦の焼けた香り。
暖かみのあるシンプルなインテリアだけれど、草津の中ではとびきり都会に来た気分。
ジンジャーミルクティとスコーンをオーダー。

ホクホクのスコーンにジューシーなママレードを乗せて、幸せをかみしめていると、
あらやだ、外は大吹雪。

このお店に入って良かった、助かった、と胸をなで下ろすと同時に、
宿のおかみさんの言葉があたったなぁと思う。

その後、結局宿に戻る。

お宿のお風呂もいいお湯だった。
草津の宿は全部源泉掛け流し。
浴室は広くないけれど、気持ちいいお湯。

疲れがドット出たのか、お風呂から上がった後も
なぜか心臓がばくばくし続けてて、顔が火照って、ちょっと頭が痛い。
湯アタリ?
もしかして、風邪?
いやいや、それはイヤだ。

目が疲れたのかと思ってコンタクトを外そうと、保存液を取り出すと、パンパン!

ハッ!
さては、ここは山岳地だな。

ってことは、これは……高山病かも。

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急な気圧の変化で頭痛や動悸・吐き気が起こる「高山病」
奥鬼怒川へ行った時もそうだったけど、1000m以上の山に登ると必ず高山病になるようだ。
今回は体調悪いわけじゃなかったし、確定だな。。

少し昼寝。

目が覚めると元気復活!
高山病の特効薬は時間だぜ。

お部屋で旅館の心造りの懐石をいただく。
心が美味しい。

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時間はまもなく20時。
行きたいところがあるんですよ!

支度をして宿を出る私にまた、おかみさんが声をかける。

「マイナス9度です!」

キュード!

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昼間は湯揉みショーが行われている「熱の湯」にて、人生初の落語!
それにしても、会場の真ん中にお風呂がある迫力よ。

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絵になるなー。
かっこいいなー。

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落語の独特の抑揚は、聞けば聞くほど引き込まれて、何もないはずのステージにはしっかり想像のセットが組まれ、何人もの役者が立ち回っていた。
面白いなぁ。

この温泉落語、毎日やっているらしい。

2階席の途中に気になる壁画(?)を発見。

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なんて豪華な面子!

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ヒゲとボイン!

外へ出ると、ライトアップされた湯畑よ。

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美しいがな。

そして、今日のシメはこちらのお湯で。

共同浴場「白旗の湯」

ここは地元の方が管理している町のお風呂で、入浴料はない。
だから私たち観光客は「借り湯」といって、お風呂を借りにいくのだ。

夜は地元の方達が日常としてこの温泉に入っている。

より「お邪魔させていただいている感」をひしひしとわきまえながらの、借り湯。

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暗い浴室、決して広くない室内、立ち篭る湯気、近所のみなさんの会話。

近所の人同士で背中を流しあっていたりして、
もしも、私がここに暮らしていたなら、なんて日常を湯船の中で想像する。

気持ちいいなぁ。

夜はあっさり眠りに落ち、この日、最低気温はマイナス16度を記録した。

 

 

草津温泉一泊二日 INDEX

東京から3200円の-16℃体験! 濡れた手ぬぐいがハリセンになる草津温泉一泊二日【前編】

昨年末、別府温泉へ行ったとき「温泉街」の持つ独特の雰囲気に圧倒された。 タイムスリップしたかのような昭和感、不思議な香り、そして何より街中から立ち上る湯気。 それら全てが渾然一体となって、俗世から私を引き裂いた感じがした […]

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時間湯合わせ湯立寄り湯、泉質主義で天国を見る! 草津温泉一泊二日【後編】

「おんせん県」の名を掛けて、大分と張り合っている群馬県。 中でも名湯の別名詞・草津温泉へ行ってきました!2月の下旬、最低気温-16度を更新し、外湯巡りで町を歩けば濡れた手ぬぐいがハリセンになる極寒の草津温泉。 オフピーク […]

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▼1日目に行った場所リスト
草津温泉資料館
べつーにーいかなくーてもーだいじょうーぶーかなー。室内が超温かい。
・湯畑
光泉寺
湯畑の全景写真を撮るのにGOOD
たけとも
・足湯湯けむり亭
新潟屋旅館
私はじゃらんで予約したよ。
西の河原露天風呂
草津ガラス蔵2号館
草津煎餅本舗
温泉マークのおせんべいがかわいくてお土産に購入。醤油じゃなくて、あの甘いヤツ。
山マタギと海番屋
田島屋
バスから湯畑を目指すとすぐ目に入リ目立つ。漬け物と饅頭が有名。ホクホクガタの饅頭で美味しかった。
TEA ROOM Yuki Usagi
熱の湯
こちらも2014年に改築予定とか。改築するとより味わいのある建物に。
白旗の湯
実は草津温泉の中で一番湯質がいいのはココではないか、という評もある。