TRIP

ムーア人が遺した要塞の旧市街、
アルファマ地区からリスボンを望む

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SUCCESS!

リスボンは7つの丘からできてる、というくらい坂が多い。だから、リスボンッ子は必ずお気に入りの「展望台」があるという。

再開発エリアをあとにして、市街地へ戻ってってきた。ここからが期待した「リスボン」観光だ。ハイウェイを通って、カラフルなマンションをいくつも通り過ぎて、街中に近づいていくほど空と道は狭くなり、建物も低くなる。道路の両端にはみっちりと縦列駐車が。車はがたぼこと縦に揺れ、道路が石畳になったのだということを身体で感じる。

向かっているのは「アルファマ地区」という場所だ。古い街並みが残り、下町の風情が楽しめるらしい。6月にはリスボン生まれの聖人で守護神の聖アントニオ(1195-1231年)を讃える「聖アントニオ祭」が行われるのだが、その頃がちょうどイワシ漁が解禁するらしく、このアルファマ地区ではそこら中から煙があがり、炭火で焼いたイワシを楽しめるらしい。だから「聖アントニオ祭」は別名「イワシ祭」だそうだ。

そうか、この曲がりくねった坂道を……と車の中で説明を聞いていたが、いくらなんでも急勾配すぎやしないか。こんな道絶対運転したくないし、かといって歩いて登るのも辛い。路面電車のトラムもいいが、観光客でみっちりだ。

ちなみに停留所の行列は座って乗車したい人列で、立って乗れば比較的すぐに乗車できるらしい。でもねぇ……。スーツケースなんて引いていたら心が折れそうだ。そのせいだろう、東南アジアで見かける3輪タクシーのトゥクトゥクがたくさん往来している。値段交渉が心配だけど、利用するだろうなぁと思った。

穴場の展望台ミラドーロ・ダ・セニョーラ・ド・モンテ

風情あるアルファマ地区は観光客にも人気の場所だ。だから、見晴らしの良い展望台もやっぱり人気。その中でも「まだ日本人観光客には知られていない」という、穴場の展望台ミラドーロ・ダ・セニョーラ・ド・モンテ(Miradouro da Senhora do Monte)を案内してもらった。

アルファマ地区の地図を眺めていて、気がつくことがある。まわりは道が比較的直線なのに対し、アルファマ地区はぐねぐねだ。それは、ここが12.5メートルの津波の被害を受けず、古い街並みを遺しているからだそうだ。

1755年11月1日9時30分すぎ。リスボンの街をマグニチュード8.5とも9ともいわれる地震が襲った。「リスボン大地震」だ。その日は万聖節の日で多くの人が教会に詰めかけていたが、ろうそくの火が燃え移り街中が大火災に見舞われたそうだ。そして初震から40分後、リスボンの街は12.5メートルの大津波に襲われ、一瞬にして街はがれきの山になったそうだ。

その中でアルファマ地区は唯一津波の被害を免れた場所だ。位置関係が、急な坂が、幸いしたのだ。アルファマの「アル」はアラビア語に由来し、ムーア人の要塞都市だった名残で道は複雑に入り組んでいる。

展望台からリスボンの街を見下ろす。写真の中央に写っているバイシャ地区がもっとも被害が甚大だったらしい。王宮や劇場などがあったそうだが跡形もない。左手に見えるのはサン・ジョルジェ城。ムーア様式を遺す遺跡だ。

アルファマ地区でパンを買う

アルファマ地区を少し街歩きした。せっかくだから暮らしている目線で歩いてみよう。最初に立ち寄ったのはパン屋さんだ。日本語の「パン」はポルトガル語の「Pão(パォン)」由来で、ポルトガルの生活を語る上でパンは欠かせない。

直径15センチくらいある、ふわふわのシンプルなパンが1ユーロくらいだった。ほどよい塩気がワインに合いそうだ、小麦の味がしっかりした。

information

Padaria Estrela da Graça
Tv. do Monte 15, 1170-108 Lisboa, ポルトガル

看板もホームページもない地元密着のパン屋さん。伝統的な方法でパンを作り続け、世界のパン好きには知られた名店であると、帰ってきて調べてから知った。ケーキもおいしいらしい。

積極的に路地へ吸い込まれて、片っ端から写真を撮る。地元民を気取って手ぶらで歩きたかったけれど、目に映るもの何も忘れたくないと思って、ついついカメラの構えが崩せない。カラフルなタイル、けだるそうな猫、そっけない落書き。観光客のすき間から、街の吐息が聞こえてくる。

アルファマ散歩の締めにカフェへ連れてきてもらった。ポルトガルにはコンビニはほとんどない。でも地元の人にとって、コンビニであり、ドラッグストアであり、集会場なのはカフェなんだそう。朝や昼、通りかかったら立ち寄って、クイッとエスプレッソをあおるのだそうだ。

大航海時代に7つの海を制したポルトガルは、ブラジルやアフリカを植民地としており、いまでもコーヒー豆の輸入が盛んだ。だからイタリアにも引けを取らないコーヒー文化がある。

コーヒーは好きだけど、エスプレッソの苦いのは、ちょっと苦手。だけど、郷に入れば郷に従え、じゃないけれどせっかく地元民気分で(写真ばっかり撮っていたけれど)歩いたのだから、エスプレッソにも挑戦してみた。あれ、おいしい。

まるでホットチョコレートのような、濃厚なコーヒーでまろやか。エスプレッソは苦さを砂糖でごまかす飲み物かと思ったけれど、お砂糖を入れなくても苦さが全然気にならなかった。ポルトガル土産にコーヒー豆を買って帰ったら、通っぽくてかっこいいな、と思った。

information

Portela Cafés
Rua da Graça 164, 1170-364 Lisboa, ポルトガル
https://www.portelacafes.pt/

リスボン内に9店舗ほどあるチェーン店。観光客向けではないけれど、初めて飲んだポルトガル・エスプレッソがここので良かった。本当においしかったし、また飲みたい。

SpecialThanks -obrigada!(オブリガーダ)-

この旅は2019年10月28日に就航した、アシアナ航空のソウル⇄リスボン直行便に乗って、ポルトガル観光局が主催するメディアツアーに参加したものです。

参考文献:図説 ポルトガルの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史) 金七 紀男著