〝私はダイナーとダイナーの狭間で生きている。旅をしているのだ〟 + 1999.07.09

〝私はダイナーとダイナーの狭間で生きている。旅をしているのだ〟 + 1999.07.09

私はダイナーとダイナーの狭間で生きている
そう 旅をしているのだ船を建てる 上

 

わたしが降り立ったことがあるアメリカはニューヨークだけなので、ニューヨークに来たら必ず行くところがある。
なんてことないダイナーだ。

 

Diner-1

 

こだわりがないのがこだわり。

強いていうならば、地元のおじいちゃんたちがきて、おかわり自由な煮詰まったコーヒーでねばってテレビを見続けているような、そういうお店がいい。

 

若い頃、初めて夢を追いかけ始めた頃。

なぜかとても「船を建てる」というマンガに惹かれた。

そのマンガはとても詩的で、内容があるような、ないような。

 

でもどうしても、たまに読みたくなってしまうんだ。

この独特の切なさがなんか、たびの終わりとリンクして、アメリカンに来たから必ずダイナーへ行きたくなる。

 

ニューヨーク滞在最終日、J.F.K空港へ行く前に、ロングアイランドシティ駅の近くにあったダイナーにフラッと入った。

 

Diner-2

 

実は初めてエッグベネディクト食べて、付け合わせのマッシュポテト食べて。

意外なことに、コーヒーも美味しかった。

 

これまでの6日間、どこへ行ったのか整理する。

 

Diner-4

 

 

初めてニューヨークに来てから16年。

わたしは相変わらず旅行者だ。

 

本当は、こっそりとした野望があって、新潟で生まれ育った18年、東京で夢を追いかけた18年、次の18年はニューヨークにいるんだ、と1999年のわたしは思っていた。

 

でも、この日記を2年越しで書いている「次の18年」のわたしの席は、今も東京にある。

 

Diner-3

 

モーニングの時間が終わった。

さぁ、東京へ帰ろう。

 

……全然知らずに入ったけど、有名なダイナーだったみたいだよ。

どうりで美味しかった。

 

Court Square Diner

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1999.07.09 ブラザー意識

※この日記は21才の私が無謀渡米したときのアーカイブです。

 

 

また、夕方近くに目が覚めた。
今日はキヨミ嬢に路上で会う約束をしている日。
未来的神少女のラフを持って路上へと向かうことにした。
ふと、日本から預かっているビデオのことを思い出し、一緒に持って行くことにした。
こんなに賑やかな路上の風景を撮っておかないとね。

しかし予想は大はずれ。
今まで2回の路上とは全然ちがって暇すぎる。
ビデオをまわしていたのでただの観光客に見えるのか?
ビデオを足元に置いてスケッチブックを描いていてもほとんど人が止まらない。
そのうちキヨミが来て、絵を見せると気に入ってくれた御様子で一安心。
しばらく二人で路上をしていたが、やっぱり人は止まらない。

私はこの街のことを全然知らないし、持っている服も日本から持ってきた少しの服だけだった。
「かわいい服屋さんを教えてよ」といい、路上は中断。
古着屋めぐりを始めた。
マイケルエコノミーが好きだった。
彼がニューヨークのイラストレーターで、今、Tシャツの会社を作っていることは知っていたが、初めて原物を見ることが出来た。でも、買わなかった。
余談だが、当時、マライヤキャリーが来日して、お台場で38万円のアメリカンショートヘアーを買った時に着ていたピンクと白のラグラン半そでのTシャツに描いてあったキャリーのイラストはマイケルエコノミーが描いたものだ。少しイメージダウンした。(笑)

路上を切り上げて歩き回っていたので大荷物だった。
うちに来てみる?と、キヨミを誘ってうちに来た。
うちの狭さにびっくりしていた。

「これで家賃600ドルは、ボラれてるで。」

のちにこれは確証する。
キヨミが子犬をひざに乗せて戯れているとおもらしをされる。
笑った。(笑)

アーリーが友達の家にピザを食べに行くと言う。その人の家は近くで、クーラーもあるから行かないか?と、誘ってくる。タダメシだと勇み足で、キヨミと行くことにした。
道すがらアーリーは黒人女性の友達に会い、彼女も友達の家へと誘った。
その友達の家にはすでに何人かいて、微妙に盛り上がっている。
ワインとピザとたばこの煙りと、それと微妙にちがう怪しい煙りがあがっていた。
ころ合いを見て先にキヨミが帰る。
彼女は今、学校が休みなので暇らしい。明日も会う約束をした。

キヨミがいなくなってから、何となく帰るタイミングを逃し、ぼーっとしていると、また、アーリーと白人男性でけんかが起こった。なんのことやら良くわからないうちにアーリーは怒って出て行ってしまった。
アーリーが出て行った後、みんなあきれ顔をしていた。
原因はなんだったのかと言うと、犬の話題。
今回は、アーリーが「いい犬の買い手はいない?」と聞くと、その白人男性が、「おれが全部でも買ってやるよ、金が欲しいだけなんだろ?」ってなことを言ったらしい。
これに怒ったのは昨日の件よりかは合点がいく。
いよいよいづらくなったので帰ろうとすると、「アーリーのだ。渡して」とキャメルマイルドを預かる。

カギを持って出なかったのでチャイムを鳴らすと応答なくカギが開いた。
部屋に入るとアーリーがふさぎ込んでいた。

「おれの犬を何だと思っているだ。」と呟くアーリーに今日は同意した。

明日キヨミと遊ぶことを思い出し、エリコも誘おうと思い、キーフードの公衆電話へいく。
エリコが出た。
「電話を貰う予定だった日、友達と御飯を食べに言って思ったより遅くなっちゃったの」と、エリコ。
(私は電話事体しなかった事実をこのとき言わなかったようで、当時公開されたこの日記を読んで怒られた。それから連絡がない。ごめんね。)

明日キヨミと言うこと遊ぶので、一緒に遊ぼうと約束する。
場所は初めて会った場所。
夕方にまた、私はポストカード販売をするので適当に来てといい、電話を切る。
部屋に帰るとアーリーはリビングに自分の作品を広げていた。
彼の作品は焼き物から絵画までいろいろだが絵画は面白い。
窓枠を窓ごと額にして作品になっている。しかも、窓枠は廃棄品でぼろぼろ。味があってかっこいい。
壊れている窓枠を一緒に直す。
今夜、個展のためにこの作品を全て搬入するんだそうだ。
手伝うことにした。

とりあえずアパート前に作品を全て出し、タクシーを拾うことにした。
「タクシーを拾ってくるから作品を見ていて」と言われて、タクシーを拾うアーリーを遠くから見ていた。

しかし、タクシーはなかなか止まらない。
乗車拒否をされているようだ。

やっとの思いで1台捕まえてこちらへやってきた。
しかし、荷物を見るとアーリーが降りたスキに行ってしまった。
こんなことがあるんだ。
憤るアーリーに「今度は私が捕まえてくる」といい、アベニューへ出る。
すぐにタクシーが止まり、アパートの前まで行ったが、荷物を見ると「嫌だ」と言って行ってしまった。

額然とした。
どうしていいのかわからないし、頭にくるしでアーリーと怒っていると、黒人男性が通り掛かった。

彼はアーリーの友達でもなく、ただの通行人だ。

困ぱいしている私達を見て、彼はアーリーに話し掛けた。
アーリーは彼にことのいきさつを話すと、なんと彼は、自分の車で私達と作品を送ってくれると言った。
そして本当に車をまわして私達を送ってくれた。

ケニア出身の彼はアフリカ出身のアーリーとはちがってかなり痩せている。
アーリーは彼に「さすがブラザーだ!」と言ってハグをしあい、別れた。

同色人種だからといってこんなことが出来てしまうブラザー意識の強さに感服した。
ふと、一昨日の日本人の反応の冷たさを思い出した。
一通り作品を運び込み、帰りのタクシーは素直に捕まった。
家に帰りつくと、肌の色なんて関係なく、人を尊敬できる人になろうと強く思った。