リスボンで最初に案内してもらったのは、近代的な建物の多い再開発エリアにある「リスボン海洋水族館」。長いスロープが印象的な現代建築で、1998年に開催されたリスボン万博の会場として建てられたそうだ。建築家は大阪の「海遊館」と同じ、ピーター・シャーメイフ氏。
旅びとの口コミが集まる「トリップアドバイサー」で世界の水族館ランキング第1位を獲得(2015年)。環境保全の視点から海洋生態を再現している。太陽光の届く上の水槽では海鳥やペンギン、らっこなどが泳ぎ回り、館内へ潜り込むと南極海、太平洋、インド洋を表現した水槽が次々と現れ、世界で4番目に大きいという水槽で北大西洋を表現していた。
順路に沿って歩いて行くと、ところどころ大水槽に面した小部屋や大部屋が。子どもが水槽に張り付いて魚を眺めたり、若い女の子が水槽の前に立って写真を撮ったりと、混雑した館内でも自分のペースで楽しめる工夫があった。
継ぎ目のない巨大な水槽の前に立っていると、水の中にいるような浮遊感につつまれる。まるで人魚姫にでも、なったようだ。
幅40メートルのネイチャーアクアリウム水槽
ふつう、水槽は人間が手を掛けないとあっという間にダメになる。餌がなければ魚が飢え、酸素も足らず死んでしまう。水草を入れればあっという間に藻に覆い尽くされて、一週間もしないでヘドロが出てくるだろう。だから、水族館の水槽の美しさは細心のメンテナンスで保たれているのだ。
では逆に、水槽の中で人間の手など入らないような「生態系」を作ってはしまおうというのが「ネイチャーアクアリウム」だ。これを提唱したのは日本人の天野尚(あまの・たかし)さん。元競輪選手という異色の経歴を持つ写真家で、水槽の中に水草という森を持ち込んだ。水草の育成を助ける二酸化炭素を添加し、光を与え、水槽を掃除する生き物たちを住まわせた。魚は、その世界に暮らすいち住人にすぎない。重力を持たない水草の国を浮遊する魚の世界は、まるでおとぎ話のようだ。
2015年8月、がんからの肺炎が悪化し死去。このリスボン海洋博物館には、天野氏の遺作がいまも設置された当時のままのレイアウトで、訪れる人を幅40メートルの大パノラマで包んでいる。
スッキリとしたレイアウトが晩年の特徴。水槽の目の前のベンチでじっくり見入るもよし、有機的な曲線のロフトから見下ろしてみるのも良いだろう。
デザイン性の高いギフトショップ
ひとつだけ後悔していることがある。
ポルトガル取材1件目がここだったため、いきなり荷物を増やしてはダメだ、と自制心を働かせたのだ。というのも、ここのギフトショップがかわいすぎて、ひとつに選び抜ける自信がなかった。
水族館のオリジナルアイテムの他、ポルトガルのアーティストの作品もあり、Tシャツもお皿も、ノートもかわいかった。全部かわいかったんだからひとつくらい買ってくればよかった。特にカニのぬいぐるみとか。
次に来たときはカフェでワインも飲んでみたい。
information
リスボン水族館
Oceanário de Lisboa
Esplanada Dom Carlos I s/nº, 1990-005 Lisboa, ポルトガル
https://www.oceanario.pt/
営業時間は10:00〜19:00
入館料は常設展+特別展示チケットで大人18ユーロ、子ども12ユーロ。窓口で買うと30分は並ぶので時間に余裕を持って。
SpecialThanks -obrigada!(オブリガーダ)-
この旅は2019年10月28日に就航した、アシアナ航空のソウル⇄リスボン直行便に乗って、ポルトガル観光局が主催するメディアツアーに参加したものです。