Love letter from カナダ 5通目：ロイヤルカップルとマックロブスターと牛の搾乳

腹心の友のあなたへ

“事件はオンラインで起こってるんじゃない！　オフラインで起こってるんだ！”

今日は赤毛のアンキャラを忘れて手紙を書きたい気分よ。
今は７月４日の夜１０時。

日が暮れてきて空も部屋もすっかり真っ暗。
昨日のお手紙で今日からハーブ農家でファームステイだって書いたと思うわ。
そう、今日は初のプリンス・エドワード島の左側、キングス地区に泊まっているの。

ログハウスのような木材むき出しの天井は斜めになっていて、
決して高くはないけれど、小さな天窓がついてるわ。
さっきまではそこから明かりがとれたのだけど、
日が暮れてしまって真っ暗よ。

もちろん、ライトはあるわ。
ベッドサイドのランプがひとつ、ね。
それもとびきり“雰囲気がある明るさ”のライトだから、
部屋の全てを照らす事は不可能だわ。

部屋は間仕切りで括られたこちら側は、
およそ８帖くらいって所ね。
ただし、半分は家主の机で占領されているけれど。

扉は合板を４つ繋げただけのものよ。
壁の役割だって果たすわ！

ベッドはシングルの３分の２くらい。
身長160センチの私が脚を伸ばしてつま先が出るくらいね。
まくらは１つ。
キャンプみたいな毛布をかけて眠るの。

そうそう！
隣には毛むくじゃらで、お客さんが来ると興奮して吠えまくっちゃう
モリーというワンちゃんが寝ているわ。
そう、まるで私を慰めるみたいにね。

信じられる？

昨日は海辺のリゾートホテルでスイートホテルに泊まっていたのよ？
２４時間前は……いいえ、１３時間前までは、
最高の景色を窓から独り占めしていたのよ。

ああ！
整理して話すわ！
この手紙が、遅れてしまったとしても、あなたの元にしっかり届くと信じて。

どんより重い雲に天気の心配をしつつ、
海辺のリゾートホテルをチェックアウト。

“ロイヤルビジット”こと英国のプリンス＆プリンセスのパレードがあります。

小さな田舎町がスゴい活気に！

プリンス・エドワード島州知事、議事長のスピーチ。
州知事は「ケイト」というオクサマと結婚５周年らしく、
ウィリアム王子に助言があるとか。（3:30頃）

いよいよ来た！
雨の中、望遠もなく、背が低い私はノーファインダーでカメラを掲げるしかなく。。
と、撮れるかしら……。

撮れたーーーーーーーー！

行っちゃった……。

この後ウィリアム＆ケイトはドラゴンボートレースなどご予定がおありだったけれど、
ひとまずパレードを拝めて満足。

腹ごしらえに。

マクドナルド・カナダは基本、アメリカのマクドナルドとは別資本らしい。

カナダ限定メニューの「アンガスビーフバーガー」については、
同じ企画で参加中のジェット☆ダイスケさんがレポートして下さっていたので……
わたしは……

アトランティックカナダこと
プリンス・エドワード・アイランド州＆ノバスコシア限定、
マックロブスター！

ゴンロン、ゴンロン、ざく切りしたロブスターがふんだんに入っています。
「ファーストフード」って味じゃない。。

強まる雨の中、車はキングス地区へ。
ファームステイさせていただく、オーガニックファームの農家へ。

一体どんなお宅かしら。
語学勉強を兼ねてファームステイをする人もいるし、
人を受け入れることができるのだから、
大家族かしら。
それとも子ども達が巣立った老夫婦？

モンゴメリのあいしたおじさんやおばさんのお宅みたいに、
あんなに立派なお宅だったらステキ！
私は語学に全然自信がないから、
小さいお子さまが居ると助かるなぁ。。

お目当ての番地をみつけて、
路地に入る。
うっそうとした木のアーチをくぐり抜けて……

ん？

え？
お家はどっち？
こっち？？

私達が家に近づくや否や、
スゴい勢いで吠えまくる白い犬。
部屋の中は独特の、嗅ぎなれないニオイと、
明らかな「犬の濡れた臭い」が。

↑冬場だけ現役の薪ストーブキッチン。

古い一軒家を少しずつ自分でリノベーションしてるんですって。
そ、そっかー……素朴で、いいですねー……

で、私のお部屋となるのがこの扉の先、ですか？

……扉？

えっ？
まじ？　ここ？

お風呂場。

……昨日との差が激しくない？

家主のマギーさんと犬のドリー。
動揺のあまり、写真がピンぼけだったのに取り直せず。。

え？
お風呂は15分しかお湯が出ない？

ま、まぁ、この落差が面白いよね。
ネタになるし、い、いいよね。

インターネットは……ダイヤル回線？
LANは、ない？

さすがのMiFiも、もちろん圏外。

ま、まじすか。
ブログ書けないじゃん……！

いきなり予定が変更できるわけもなく、
そのままガイドさんは帰ってしまい、
マギーさんとふたりに。

外は雨でやや肌寒い。

私は話も出来ないので、仕事がないと気まずい。

とにかく、仕事を。

キュウリやトマトの蔦を巻き、リングをはめるだけの簡単なお仕事。

あと、ハーブの苗を埋めたり、種を植えたり。

ワンワン！

近い！

少しお休みして、次は大きな酪農農家へ。

雨にぬれてより一層、赤くなる道。

オシリふりふり。

ぱいおつかいでー。。。

いろいろ説明を受けている間に
だんだん気持ちが負けてくる。。

「搾乳、やってみる？」
と聞かれ、こりゃ無理だ、ととっさに判断し
「 NO!」
と言ってしまった。

言ってしまったんだけど……

乳が搾られると端から座って行く。

「ひと仕事終わったわ～」

白黒だけどウシじゃにゃい。

「ボクもウシではないです」

雨も上がり、帰る道すがら、野いちごとブルーベリーの畑を見せてもらった。

かわいい。

プリンス・エドワード島では放っておけばブルーベリーが育つらしく、
主にやる作業は「ブルーベリー以外の雑草を取る」ということらしい。
この写真に写っている平野の４倍くらい、全部ブルーベリー畑。

この量になると「雑草をとる」はかなり大仕事なんじゃ？

冬の間はもちろん、
夏も週に２度ファーマーズマーケットでまとめ買いする以外、
外出をしないとマギーさん。
こうやって地下室に食材を貯めておくとか。

お夕飯の用意に新しいピクルスを空けてくれた。

もちろん、食材も使う分だけ畑からとってきます。

庭のリンゴから作ったと言う、手作りりんごジュース！
濃厚でおいしかった！

「ライスパスタ」にお手製トマトソースと
開けたてのいんげんのピクルス、
サラダはもちろん、さっき収穫したもの。

上に乗っているチーズは、
先ほどお邪魔した酪農農家さんで作っている物ですって！

（ピピピピピ……）

わぁ！！！！

すごくステキな風景だわ……

今回、
ここがオフラインの場所であった事は、ある意味とっても助かった。

オンラインである限り、なんだかんだ言って
私はずっと「努力」し続けなくちゃ行けない。

リアルタイムで届ける努力を。
魅力的に伝える努力を。
アクシデントを面白がる努力を。
ポジティブで居続ける努力を。

PEIはホントに素晴らしい場所で、
ガイドさんのきめ細やかなサポートに助けられ、
ホントに何一つ、不愉快だったり不便だったりすることがなかった。

部屋はきれいで当たり前だし、
ローカルを知りたいなんて言っても
地元で評判の名店へ連れて行ってもらえた。

不愉快な気持ちに、なるわけがない。

初めてこのファームを見たとき、初めてネガティブな感情が浮かんだ。

「ここは、ディープすぎるんじゃない？」

インターネットが通じない事を理由に、
どこか違う場所に変更になるなら、それに期待した。
そのくらい、私は引いたのだ。

もちろん、ホスト先が変わる事なく、ガイドさんは帰り、
私とマギーさんだけになった。
英語が全然話せない私が、緊張の気疲れをほとんど起こさなかったのは
すでに体力的に疲れていたから。
気疲れするような気を回す元気がなかったのだ。
だから、不安というより単純に不満だった。
他人事の様に今日の自分の心の移り変わりを眺めることができた。

インターネットが通じていたら、こうは考えなかっただろう。

その時の出来事を即時にツイートするため、
ネガティブな気持ちは「面白さ」に変えて
ツイートしていたと思う。

「赤毛のアン」の作中で11才の赤毛のアンが言った様に
「たいていの出来事は楽しもうと決意すれば楽しめる」だ。

“決意すれば”

オンラインで居たら“決断”していただろう。

でも事件はオフラインで起こったのだ。

自分のネガティブな感情はどうなるんだろうと斜に構えて、
むりやり前向きに変換するのをやめた。
誰にポジティブぶる必要もないのだ。

自分の気持ちの移り変わりを、
ゆっくり観察していて気がついたことがある。

アンは「決断すればたいていのことは楽しくなる」
と言っていたけれど、それは違うと思う。

たいていの出来事にすでに面白さはあるのだ。
そこに歯車が合うか、合わないかだけ。

そして、最初は掛け合わない歯車も、
やがて調子を整えてしっかりかみ合う時もくる。

“決意”なんてして、ムリヤリ合わせる事なんてないのだ。
構えず気負わず見比べず。
肩の力を抜いて楽しておけば良いのだ。

ムリヤリ好きになったって、それは終わりのあるただの妄想。

だから豊かな森の木々の様に、、
風に合わせてなびきながら、目の前の出来事に流されよう。
それでも楽しいと思えるなら、
あなたはきっと、それとぴったり合っていて、「好き」なんだ。

虫の死骸と土塊だらけの、
きったない4WDの助手席でドライブしている時に、
私には突然それがきた。

ネガティブな気持ちから、
ギアがぴったり合ったみたいに、こう思った。

“ああ、私はこういう所も含めて、プリンス・エドワード島が好きだわ”

自分にぴったり「合っている」ところは、
一生懸命探さなくったって、互いに呼び合ってピタッとハマる。

それは趣味でも、島でも、人間でも。

あなたとも、いつまでもそういう友で居られたら嬉しいわ。

プリンス・エドワード島のキングス地区から
愛をこめて。

エルダーオーガニックハーブファームのコヤナギユウより。

自分がどうこうってより、
相手に申し訳ないなぁっていつも思うよ……。