昨年末に福岡にあるラボ兼化粧品メーカーのFILTOM(フィルトム)さんと一緒に「微生物育成リップ」というものをつくったんだ。
人間の肌にはたくさんの生命体が暮らしていて、共存共栄のもと美しい健やかさが保たれているのはくちびるも同じ、という考えのもと、ではくちびるの生命体が生きやすいリップを作ればちゃんとくちびるの「微生物」たちがいい仕事をしてくちびるの健康を保ってくれるはず! というこれまでになかった画期的なリップなのだ。
特に防腐剤と抗生物質に頼りすぎてる日本社会で環境ストレスと闘う女性の唇は、微生物バランスを崩しやすい。
常在菌が劣勢になると理想的な保湿状態を保つことができない。保湿剤やグロスでは本来の健康な唇は表現できないし、理想的な微生物バランスも保てない。
だから、真に魅力的な唇を手に入れるには、微生物を育てなければならない。
2つの微生物(常在菌)が優勢に繁殖できるように栄養を与えれば本来の潤いを取り戻す。
ただ、ビタミンや適度な潤いを与えるリップスティックはもちろんすでにある。
ヤクルトのような微生物そのものを与える化粧品は法制上にもむずかしい。
しかし、アミノ酸、カゼイン、オリゴ糖、ミネラルなど、プロピオン酸菌に必要なバランス栄養素に着目したリップスティックはまだない。 プロトタイプス第一弾 微生物育成リップ | FILTOM INC.(尾池哲郎・工学博士)
「とにかくあらゆる“いい”を、なにも考えずに詰め込んで、まずは使ってもらってみよう」ということで開発した「プロトタイプス」シリーズとしてリリースした。
ラボから出来たてとって出しって感じの簡素さもいいんだけど、「あらゆる“いい”」をリップに詰め込もうと思ったら、理系の研究室だけではどうしても作り出せない、でも、どうしても入れたいものがあった。それが「香り」だったんだ。
香り作りの専門家をゆる募
FILTOMの本命はプラセンタ化粧品。C6と名付けられたそのシリーズは「変化が出る量を届くサイズまで磨いているのだから〜〜(薬事法を考えて自粛)」と豪語するデキる基礎化粧品たちで、乳液にはFILTOMの香り(ラベンダーとカモミール)がついている。
それもそれで悪くはない、けれど、リップであった時はそれが最適なのだろうか。
とはいえ、コヤナギも香りの調合なんて専門外すぎて、とても自分ではできない。
潤沢な予算で外注できたらいいけれど、予算なんて概念のない研究室では試作品だけマイナスだ。だ、、誰かいっしょに協力してくれる人いないかなぁ、なんて気持ちでFacebookでつぶやいた。
いたーーーーー!!!!
原田さんは美味しいもの好きつながりで知り合ったセラピストさん。というか初対面の時はマヤ暦がどうとかって話だけ覚えていて、このときはセラピストであることも分かっていなかったよ。
さっそく打ち合わせをして、いくつか試作品を作り、今の微生物育成リップの香りができたんだけど、今回はわたしから、原田さんにインタビューしてみたよ。
アロマテラピストで“現代版マヤカレンダーツォルキン”な原田尚子(はらだ・なおこ)さん
微生物育成リップの紹介記事を書いたとき、下書きを原田さんにご確認いただいたらこんな返事が。
原田さん、いきなりリップと全然関係ないんですけど、「現代版マヤカレンダーツォルキン」ってなんですか。
原田さん「これです」
え?
「マヤ暦には大きく2つあって、ふつう、“マヤ暦”というといまでもマヤの人たちが使っている、584日暦、780日暦、819日暦というようなたくさんの暦ことを指します。目の前にあるこれは1990年代にホゼ博士が作った新しいマヤカレンダーなので、“現代版マヤカレンダーツォルキン”です。マヤ語でツォルキンとは260日の暦のことを指します。ちなみに、マヤ文明はいまでも説明できないような非常に高度な文明であり、違う星から来た4人の天人が作ったといわれています。 ホゼ博士は高次元の領域と繋がって現代版マヤカレンダーツォルキンを作りました。その領域には「銀河連盟」という高次元ネットワークが存在していて、その中で「時間」を管理する意識体が存在しているんですね。その意識の集合体のことを宇宙語で「マヤ」と呼んでいます。つまり、銀河のマヤ=高次元の意識存在・時間を管理する知性のことを指します。で、宇宙語にもツォルキンという言葉があって、それは、9次元領域の調高周波である銀河の音を可視化したもの、という意味です。 だから、目の前にあるこの暦は、銀河の音が目に見える形になったもの、ということなのです」
ぎ、銀河連盟に、宇宙語……?
よし、ここを解き明かしても不毛だから次に行こう!
自由、自由!
「セラピストとして独立したのは2006年です。大学では日本画を習っていたのですが、とてもそれでお金を稼げるものではないと分かっていたので、普通に会社員として就職しました。ですが全然楽しくなくて。派遣社員に転職し、ふっとアロマ、というかエッセンシャルオイルというものを知りました。エッセンシャルオイルは今ほどメジャーじゃなくて、とりあえず東急ハンズに行ったんですよね。そこにたくさんの小瓶が並んでいて、聞いたことのない名前ばかり。何気なく手にとって1本買って帰ったものの、どうやって使えばいいのか分からなくて、たまにフタを開けて直接嗅いだりとかして。(笑)」
香水や燃やすタイプのお香は昔からありましたけど、エッセンシャルオイルって珍しかったですよね。
「とにかくなんか、知りたいって思ったんですよ。仕事になるかどうかなんて考えなくて、ただただエッセンシャルオイルのことを知りたくて、働きながらスクールに習い始めました。そこでは香りの効能や由来だけでなく、エッセンシャルオイルを使った手技も教える学校だったんです。学んで初めてセラピストという職業を知ったくらい」
たしかに、2000年代前半はマッサージや指圧、中国式マッサージなんかはありましたけど、エッセンシャルオイルを使った施術はまだ一般的じゃなかったですよね。クラブイベントの一角でキレイなお姉さんが出店してたイメージです。(笑)
でも人の肌に触れるってけっこう高いハードルなように感じます。
「そうですよね、わたしも抵抗がありました。でも、授業でやらなくちゃいけない。そのときに生徒同士でやりあうじゃないですか。やってもらったら気持ちいいんですよ。そして、やり返してあげると、気持ちいいと喜んでもらえて、とても嬉しかったんです」
なるほど〜。
「そんなとき、スクールで一緒に学んでいてすでにアロマテラピストとして働いていた友人が、いまの職場を辞めて独立するから後任を探しているというんです。アロマテラピストの仕事が続くかは分からなかったんですが、他の仕事であっても続くか分からないし、いいタイミングだということで、派遣社員を辞めてセラピストとして働き、4年後に独立しました」
強い意志を持って、というよりなんだか流れるようにアロマテラピストに。(笑)
「そうですね。(笑)それで、わたしは子どものころからずっと占いが大好きだったんですよ。占星術とか、タロット占いとか、いろいろありますよね。ただただ好きで、趣味で勉強していました。だから、独立するときに少しは強みになるようにと、占星術をセットにしたメニューなんかもやっていました。あるとき、ふと“マヤ”というのが気になり、勉強し始めてみたらタイミングのいい出会いもあり、“現代版マヤカレンダーツォルキン”での鑑定を始めるにいたりました」
原田さんのサロンは「ホリスティックセラピー パチュリ」という名前ですが、どういう意味なんですか?
「パチュリは、なんにも分からなかった会社員時代に、東急ハンズで初めて買ったオイルの名前です」
あ、さっき“どうやって使っていいか分からないから、たまに嗅いだり”してたっておっしゃってたやつですね。
「そうです。ホリスティックというのは、ホロス=全体、と言う意味。占星術で星のことを見る表を“ホロスコープ”っていいますけど、同じですね。それでセラピーとしたのは手技などの表面的なケアだけではなく、心身の健康って食生活や睡眠などいろいろなことが関係しているじゃないですか。体と心をいい状態にしておくお手伝いがしたいという思いからセラピーとしました」
なぜ初めて買うエッセンシャルオイルに「パチュリ」を選んだんですか?
「なんか、“墨汁の香りがするな”と思ったんですよね」
えっ!? それはいいにおいなんですか? やっぱり日本画をならっていたから馴染みがあったとか?
「あ、日本画とのつながりは今言われて初めて気がつきましたよ〜。嗅いでみます? パチュリ」
(恐る恐る)……ん? え? 全然墨汁じゃないですよ!(笑) なんか、もっと華やかな感じ。でも、うん。たしかに複合的な香りがしますね。複雑。残り香に木のような香りをたしかに感じます。墨汁かどうかは分からないですけど。(笑)
「香りは人によって感じ方が違うものです。好き嫌いもあるし、体調によっても変わりますから」
それを人に頼まれて調合するって、難しそうですね……。
微生物育成リップの香りをつくる
「初めて無香料のリップを嗅いだときは、たしかに、酸っぱいような香りがしました。それがくちびるの環境に暮らす微生物たちの栄養の香りと知って、興味深かったです」
ですよね。必要なものの香りだし、決してイヤな部類ではないけれど、コラボさせてもらっているのだから、なにかいい形で解決したいと思ったんですよね。
原田さんは天然成分のものだけを扱うとのことですが、なにか理由はありますか?
「オーガニックだから肌にいい、というわけではないんです。それにオーガニックの定義は難しい。だけど、わたしは単純に、自分が取り扱うものであればなるべく農薬や薬品が“介入”して欲しくないなと考えているだけです」
なるほど、微生物育成リップの香りを作る上で気をつけたことはありますか?
「まずユウさんとの好みがそれほど遠くないことを確認しました」
バーに集まってろうそくや香水を広げてあれこれ嗅ぎましたね。あのとき気がついたんですけど、わたしはけっこう個性的で強い香りが好きだなぁと思って、原田さんを惑わせてしまったのではと思いました。(笑)
「いえいえ。(笑)でも、たしかにリップは鼻に近いのでつけていつまでも香っていたらご飯を食べるときに邪魔になるでしょう。とはいえすぐに消えてしまってもなんだか損をした気分になってしまうので加減は難しいですね。また、低刺激であることも重要です」
最初にいただいた試作品は、わたしはぴりぴりする感じがありました。
「肌にいいといわれているものや、雑菌の繁殖を防ぐような機能性も考えて柑橘系の精油を使っていたのでそれでしょうね。わたしはなんともなかったのですが」
そうなんですか。
「こんな風に精油は香りだけでなく感じ方も人それぞれなんですよね。でも無難に香りをまとめすぎてもつまらない。ユウさんらしくない」
恐れ入ります。
「最終的にラベンダー、カモミール、フランキンセンス、ゼラニウム、マージョラム、サンダルウッドをブレンドしたものを採用いただきました」
華やかだけど、清潔感があって、すっとしっとりとした落ち着きのある香りになりましたよね。
今後、原田さんが香り作りで関わってみたいことってありますか?
「そうですね〜(しばらく考えて)そうだ、空間演出とかはやってみたいですね! 結婚式のエントランスの香りとか作ってみたいです。引き出物にしてもいい。楽しい思い出を香りにしたいです」
いいですね! 記憶と香りってかなり結びつきますものね。幸せの絶頂の香りの記憶を作っておいて、その後大げんかしてしまったらごめんねの気持ちを込めて香りを炊いて仲直りとかステキです。
(そうだ、インタビューの時に伝え忘れたけれど同じブレンドの精油欲しいと思っていたんだった。あとでメッセしよう……)
原田さんのお話を聞いて、どんどん宇宙の話になってしまったときはどうしようかと思ったけれど、ああいう発想の飛躍って、実は尾池博士とすごく似てると思ったんだよね。
あらゆる意味で可能性に偏見でフタをしてしまっては、新しい発想は出てこない。
FILTOMの微生物育成リップだって、美容業界から考えたら異例の「微生物」推しで、とても実験的な試みだと思う。
だから、いきなり大ヒットすることはないと思っているんだ。
マニアックな人が使い始めて、口コミでじわじわ広がって、必要な人に届いたらいいなという気持ちで作った。
でも、思っていたよりも必要性を感じて「微生物」という単語に興味を持ってくれる勇敢な人が多く、想定よりも早いスピードで広まっているように感じる。
今週(2018年1月29日の週)の前半に発売される日経MJにも小さく紹介いただけるようで、関係者一同歓喜。マニアックな方はぜひチェックしてみて欲しい。
分からないからおもしろい。微生物育成リップの受け止められ方も、未来も、宇宙も、分からないものなのだ。
原田さん、今回はありがとうございました!
コヤナギユウへのインタビューは尾池博士が書いてくれたこちらをどうぞ。
近年は施術のほか香水作りや虫除けスプレー作りなど主に精油をブレンドする講座を開講し、リピーターが出る人気講座となっている
英国IFA認定アロマテラピスト
あすわマヤンカレンダーリーダー
ホリスティックセラピーパチュリ(東京・町田)主宰
BOOKカウンター
最後まで読んでくれてありがとうございました!
この記事は6000文字ありました。
書籍にするとおよそ8.5ページ分です!
コヤナギの記事は写真もいっぱいあるから、本当に本だったら倍以上のページを読んでると思う。
「活字離れ」とかいわれるけどさ、けっこう読めてるよね。
もしも記事がおもしろい・お役に立ったら、シェアやフォローをしていただけると、とっても励みになります!